★★★★☆
あらすじ
ローマ帝国に鎮圧され、家族を殺されたケルト人の生き残りの男は、奴隷の剣闘士としてポンペイにやって来る。
感想
火山の噴火により消失した都市、ポンペイが舞台。時おり小噴火や地震が起きたりしているのに、誰もが気にせず平気な顔で暮らしているのは信じられないという思いがするが、近く大地震がくると言われながらも多くの人間が住み続ける日本も大して変わらないか。
家族を皆殺しにされ、奴隷となり剣闘士として成長した主人公。やって来たポンペイで、町の有力者の娘と知り合った事から物語は動き出す。この娘が映画のヒロインとなるわけだが、演じるエミリー・ブラウニングがうーん…となってしまうような微妙な顔立ち。可愛いわけでも美人でもないように個人的には見える。
キーファー・サザーランド演じるローマの上院議員が彼女に執心してわざわざポンペイまでやって来て、結婚しようと両親を脅したりするのだが、なんだか説得力を感じない。上院議員は主人公の両親を殺した仇でもあるので、おかげで仇討のチャンスを得るわけだが。
しかし、上院議員に脅されることになったヒロインの父親の失言だが、別に相手が狡猾な男だったからではなく、初対面の相手だったら誰にだって失言になりうる発言だと思うのだが。それとも、ローマ帝国下では多少の辛辣な批判は許容されていたということか。
色々あって、ついには火山の大噴火が起こって町は大パニックに。この火山の噴火の様子、逃げ惑う人々の姿、崩壊する建物などは、迫力があってパニック映画として良い出来だ。大災害の前では人間はあっけなく死んでしまう。生きるか死ぬかなんて運でしかない事が良く分かる。
そんなパニックの中を、ヒロインと親の仇である上院議員と絡みながら避難する主人公。だがラストはそれまでを無にしてしまうようなエンディングとなっている。実際のポンポイの大噴火でも、一瞬にしてほとんどの人が死んでしまったという事なので、リアルなのかもしれないが、それでも、というよりだからこそ、ハッピーエンドにして欲しかった。
主人公の友人となった剣闘士の最後のセリフのように、結果は同じだったとしても、どういう過程でそれを迎えたかで心持ちは違う、というのも分かるのだが、どうもスッキリしない。ラストシーンの演出がやりたかった事なのだろうが、そもそも主人公はヒロインに恋心があったのかすら良く分からないわけで、それならせめてヒロインだけでも生き延びて欲しかった。そうすれば主人公の行動は報われたような気がする。
とエンディングについてモヤモヤしてしまうのは、ヒロインの説得力の問題が最後まで尾を引いているからだろう。誰もが納得の美人なら、たいがいの事は許せてしまっていたかもしれない。
それから振り返って見ると、主人公は一応、一族や両親の仇を討てたことになるのだが、全然その場に立ち会っていない。それで本人の気は晴れたのだろうかと疑問ではある。
スタッフ/キャスト
監督/製作 ポール・W・S・アンダーソン
脚本 ジェネット・スコット・バチェラー/リー・バチェラー/マイケル・ロバート・ジョンソン
出演 キット・ハリントン/エミリー・ブラウニング/キャリー=アン・モス/アドウェール・アキノエ=アグバエ/ジェシカ・ルーカス/ジャレッド・ハリス/キーファー・サザーランド
撮影 グレン・マクファーソン
登場するキーワード