★★★★☆
あらすじ
相棒と共に、ボスを裏切った若者たちの部屋に向かったギャングの男。
ジョン・トラボルタ、サミュエル・L・ジャクソン、ユマ・サーマンら出演、クエンティン・タランティーノ監督。カンヌ国際映画祭パルム・ドール、アカデミー賞脚本賞受賞。154分。
感想
裏社会に生きる男女の群像劇だ。だが繰り広げられるのはヒリヒリするような殺伐としたやり取りではなく、くだらない馬鹿話をしたり泣き言を言ったりしながら仕事をこなす、どこかユルさのある光景だ。きっとこちらの方が彼らのリアルに近いのだろう。
ボスを裏切った若者の家を訪れるシーンでも、二人の男はその道中で延々と仕事とは関係のないくだらない会話をしている。そして彼らの部屋の前に到着したのに、まだ少し早いと一旦その場を離れ、また無駄話の続きを始めたのは可笑しかった。劇中はくだらなくも面白い雑談に満ちている。
男のひとりは、その後ボスの命令でその妻にアテンドし、レストランを訪れる。ここで二人はダンスコンテストに参加して踊る。レトロで時代遅れのダンスを真剣に踊る二人の姿は、そのダサさも含めてクールだ。ジョン・トラボルタが踊っているのもグッと来るところだが、とても印象深いシーンになっている。
話の進行上、絶対に必要ではないのだが、こういうシーンがいつまでも記憶に残ったりする。これも映画の醍醐味だと再認識させられる。無駄なく的確にストーリー進行すればいいというものではない。その他にも劇中には、そんな記憶に残りそうなシーンが散りばめられている。
いくつかのエピソードがオムニバス形式で描かれる構成だ。なかでも八百長の約束を破ったボクサーとボスのエピソードは、全く予想外の方向に物語が進んでいく。当然二人の対決になるのかと思っていたら、なぜか共に謎の男に監禁されてしまう訳の分からない展開となる。どういうこと?と戸惑ってしまうが、シュールすぎる流れに目が離せない。どのエピソードも一筋縄ではいかない展開で面白い。
そして各エピソードは時系列順ではなく、シャッフルされて描かれる。ビシッとスーツを着ていた二人が、次のエピソードでは間抜けなTシャツ短パン姿で登場したりして、なにがあったのかと軽い驚きと好奇心を与えてくれる。これらの話がどんな風につながっていくのかと引き込まれてしまう。そして色々あった後に、映画冒頭のシーンに戻ってくる構成も巧い。
会話が軽妙で、印象に残るシーンがたくさんあり、エピソード自体も面白い。映画全体の構成にも妙味があるのだから、面白くないわけがない。トイレから出てくるたびに災難に見舞われるジョン・トラボルタ演じる男など、それぞれ登場人物のキャラも立っているし、音楽もいい。とにかくたっぷりと映画らしさを堪能できる作品だ。いい余韻に浸れる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原案/出演
原案 ロジャー・エイヴァリー
製作総指揮 ダニー・デヴィート/マイケル・シャンバーグ/ステイシー・シェア
出演 ジョン・トラボルタ/ティム・ロス/アマンダ・プラマー/エリック・ストルツ/ロザンナ・アークエット/ブルース・ウィリス/ヴィング・レイムス/マリア・デ・メディロス/ハーヴェイ・カイテル/クリストファー・ウォーケン/フィル・ラマール/フランク・ホエーリー/バー・スティアーズ/アレクシス・アークエット/スティーヴ・ブシェミ
音楽 カリン・ラクトマン
この作品が登場する作品