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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「鯨と斗う男」 1957

鯨と斗う男

★★★☆☆

 

あらすじ

 有能だが傲慢な捕鯨船の船長と、そんな彼に反発する若き乗組員の男。

 

感想

 捕鯨船が題材になっていて、今同じような映画を撮ろうとすると色々とややこしい問題が起きるのだろうなと、なんだか少しドキドキしてしまう。だが当時は別に何のためらいもなく撮っていたのだろう。

 

 冒頭で、海上でクジラを獲る様子やその後の解体作業の様子などが詳しく映像で紹介されていく。これがなかなか迫力があり、興味深い。かつては映画が、今ではテレビや動画サイトがやっているような、こういう普通では見ることが出来ない光景を映像で紹介する役割を担っていた。

 

 それから捕鯨の様子だけでなく、舞台となっている仙台や松島あたりの絶景にも目を奪われてしまった。旅館はともかく、高倉健演じる主人公が住む下宿からの光景ですら絶景だ。昔はほとんど高い建物がなかったので割とどこからでも景色が良かったはずで、もしかしたらあまり絶景の価値が高くなかったのかも、と思ったりした。その他、(ちゃんとロケを行っているのであれば)昔の仙台の街の様子などが見られるのも面白い。昔の映画は単純に昔の光景が見られるので、それだけで楽しめたりする。

 

 物語は傍若無人で傲慢なベテラン船長と、血気盛んで正義感の強い若き主人公が対立する物語。主人公の兄はこのベテラン船長に殺されたようなものという噂があり、二人の間には因縁もある。さらにはその間を行き来する若い女の存在もあって、徐々に緊張感を高めながら物語が進んでいく。

 

 そして、その合間には謎のクジラ祭りがあったり、女同士の激しい取っ組み合いがあったりと飽きさせず、普通に娯楽映画として時間を忘れて楽しむことが出来た。メインのストーリーも、悪い奴にしか見えなかったベテラン船長だが、実はある理由から悪役に徹していただけ、という事が分かって大団円を迎える、ありがちではあるが悪くない展開だった。

 

 

 だが嫌われ役に徹していただけとは言いながら、船長がやっていた他の船の獲物を横取りするような身勝手な行為の数々に対しては、その言い訳は通用しないはずだ。最後はノーサイドみたいな感じになっていたが、それらまで全部水に流してしまうのはさすがにおかしいだろう。そこが引っかかって、もやもやした気持ちが残ったままになってしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督 津田不二夫

 

出演 

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佐野周二/小宮光江/花沢徳衛/ディック・ミネ/坂本武/月丘千秋

 

鯨と斗う男

鯨と斗う男

  • 佐野周二
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