★★★☆☆
あらすじ
戸籍を売られ、闇で生きるしかない若い男は、たまたま手に入れた裏社会のデータを使い、運命を変えようともがく。
染谷将太主演、綾野剛、村上淳ら出演、石井岳龍監督。ロックバンドbloodthirsty butchersが音楽を担当している。110分。
感想
金を盗んだ主人公が男に追われ、逃げるシーンから物語は始まる。ノイジーなロックに揺れるカメラと、疾走感のある映像だ。この雰囲気は映画の最後まで続く。全編にわたって流れ続ける爆音のbloodthirsty butchersの音楽が心地よい。
主人公は盗んだものの中に、売買用の戸籍リストなど、裏社会で使われる貴重なデータの入ったハードディスクがあることに気付く。そしてこれと引き換えに、自分を虐待して捨てた父親の情報を手に入れようとする。しかしそれは裏社会の男を怒らせ、逆に窮地に追い込まれてしまう。
盗んだ相手のところに臆することなく出向き、取引を持ちかけること自体がふてぶてしいが、主人公の一貫して肝の据わった言動が印象的だ。捕まって脅されても決して屈しないし、難を逃れれば再び挑みかかる。反抗心溢れるパンクやロックな態度だ。
主人公は同じような境遇の女と行動を共にするようになる。その影響もあり、主人公の目的は、虐待した父親に復讐を果たすという後ろ向きのものから、 二人で暮らすために、立ちはだかる者を倒すというものへと変わっていく。その心境の変化を示すように、映像はモノクロからカラーへと変わる。
敵を倒すことを決意した主人公らに、それまで反目していた男たちが共鳴する展開は熱い。彼らのその後の行動もまた、ロックだった。敵地に乗り込んで繰り広げられる激しいアクションは、笑ってしまうような荒唐無稽さもありながら、激しく見ごたえのあるものになっている。否応なしにテンションが上がる。
ラストの結末もうまく決まっている。それまで、悪夢に目覚める主人公の動きが変だなと気になっていたが、それが伏線になっていた。
全体的にロックな雰囲気が漂う、高揚感のある映画だ。しかし、途中で主人公と女が互いに気を遣って優しさを見せ合うシーンは、ロックじゃなくて少し冷める。そこは阿吽の呼吸で突き進んでほしかった。社会的弱者に常に強くあれと望むのは酷だが、物語的にはそうあってほしかった。
エンドロールも爆音のロックで締めてほしかったが、ここは敢えてそうしたのだろう。
スタッフ/キャスト
監督/編集 石井岳龍
脚本 いながききよたか
出演 染谷将太/水野絵梨奈/渋川清彦/村上淳/綾野剛/瀧内公美/奥野瑛太/吉村秀樹
音楽 bloodthirsty butchers
撮影 松本ヨシユキ

