★★★★☆
あらすじ
政治家も巻き込んだ暴力団同士の抗争が繰り広げられる西日本の中小都市で、暴力団担当の刑事をする男。
菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫ら出演、深作欣二監督。100分。
感想
冒頭は、暴力団担当の刑事である主人公が、カチコミに向かうチンピラたちをけしかけるシーンから始まる。それに続くのが、書き殴ったような毛筆体の赤いフォントに、切羽詰まった突き刺すような音楽と、不穏に満ち満ちたオープニングクレジットだ、一気に物語の世界に引き込まれる。その合間に抗争の経緯を説明する演出も巧みだ。
そしてここからは暴力の嵐だ。殴り込んだり車で突っ込んだり、何もない時でも無暗に突っかかったり、やたらけしかけたりと、とにかくみんなの血の気が多すぎる。暴力団員だけでなく、刑事である主人公まで平気で暴力を振るっている。
やることもえげつない。中でも主人公が、連行した下っ端のチンピラを懐柔するために取った策はあくどかった。食事や弁護士の便宜を図ろうとする組を嘘で遠ざけて孤立させ、本人には徹底的に暴行を加え不安にさせる。そして完全に心がやられたところで、優しさを見せて取り込んでしまった。
主人公は、片方の組の若衆頭に肩入れしている。完全なる癒着だが、彼の中では必要悪で、それでもまだ正義を為しているつもりでいる。彼なりのルールで町に平和をもたらそうとしているのだが、それは他の登場人物たちも同様だ。みんなが自分なりの正義で動くから、決して平穏は訪れない。一番の問題はそれぞれが、目指す理想の世界の中心に当然のように自分を置いていることだろうか。
これはヤクザの世界に限らず、世の中のいたるところで見られる現象だ。中には自分なりの正義もなく、思考停止して「アカが、アカが」と馬鹿の一つ覚えみたいに見当違いの言葉を繰り返すだけの空っぽの人間もいたりする。
後半、県警から梅宮辰夫演じるエリート警部補がやってきて、刑事の汚職防止に乗り出したことで、物語の様相は一変する。警部補も皆と同様に、彼なりのやり方で正義を為そうとしているだけではある。だから主人公ら部下は反発し、持ちつ持たれつの関係を断たれたヤクザは暴走を始めた。
しかし、彼のルールは属人的でなく、継続性も再現性もあるもので、つまりは誰でもいつでも容易に引き継げるやり方だ。結局はこれが一番良いのだろう。組織の運用が最終的に、コンプライアンスに基づいたものに行き着くのは必然かもしれない。その人にしか出来ない唯一無二の職人技など不要だ。
そんな時代の変化の中で悪あがきする男たちの物語だ。やくざも警察も政治家も大して変わらないという反骨心溢れるメッセージも感じられる。
タレント出身議員の“出世頭” 三原じゅん子氏の暴力団交遊疑惑と絶えない金銭トラブル|日刊ゲンダイDIGITAL
最初は、方言のクセがすごくて何を言っているのかよくわからないよと、少し苛立っていたが、気がつけばギラギラした男たちの、ざわざわと殺気立った世界に目を離せなくなり、夢中になって見ていた。そのあたりは黒澤明映画の魅力と似ているかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督 深作欣二
脚本 笠原和夫
出演 菅原文太/松方弘樹/梅宮辰夫/佐野浅夫/山城新伍/汐路章/室田日出男/片桐竜次/田中邦衛/成田三樹夫/川谷拓三/金子信雄/小松方正/中原早苗
音楽 津島利章

