★★★★☆
あらすじ
銀行強盗をして立て籠もることになった犯人は、人質らと奇妙な関係を築くようになる。
ストックホルム症候群の語源となった「ノルマルム広場強盗事件」を題材とした作品。イーサン・ホーク、ノオミ・ラパス出演。92分。
感想
実際に起きた銀行強盗事件を題材にした物語だ。だがどこか牧歌的な雰囲気が漂っている。立て籠もった強盗の主人公はラジオで音楽を聴いたりトランプをしたりしているし、対応する警察も交渉のため、警戒心もなくふらっと主人公の前に現れる。人質となったヒロインですら、子どもたちの夕飯を心配して夫に料理の手順を詳細に伝えたりしている。
このユルさが可笑しみを生むコメディになっているが、のんびりとした空気感は時代のせいなのか、それとも舞台となったスウェーデンのお国柄なのか。特に警察は、人命がかかっているとは思えないお役所的な対応で、そんなので大丈夫なの?とこちらが心配になってしまう。あれは出来るけどこれは出来ないよ、などと役所の窓口くらいのテンションで主人公に語りかける。
これに人質が不安になるのは当然だろう。彼女たちにとってベストなのはさっさと犯人の望みを全面的に叶えてしまって自分たちが解放されることだ。だから犯人の邪魔をして逮捕しようとする警察には反発し、犯人と一心同体になりやすい。考えてみれば自然な心理のように思えてきた。
思っていたほど人質たちの行動が異常には見えなかったのはそのせいだろう。主人公が何かと優しいのでなおさらだ。どちらかというと主人公の優しさの方が奇異に映って研究対象にしたいくらいだった。
主人公と警察のグダグダぶりで楽しませてくれる映画だ。主人公を演じるイーサン・ホークが陽気でどこか抜けている憎めないキャラを好演している。また劇中で何度も流れるボブ・ディランの曲も心に染みた。
本音を言えば、どこか中途半端なところがあって、「ファーゴ」のようにもっと面白く出来たのでは?と思わなくもないが、「ストックホルム症候群」を追体験できるという意味でもなかなか面白く、興味深い映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ロバート・バドロー
原作 The Bank Drama | The New Yorker
出演 イーサン・ホーク/ノオミ・ラパス/マーク・ストロング/クリストファー・ハイアーダール/ジョン・ラルストン
音楽 スティーヴ・ロンドン