★★★☆☆
あらすじ
定年を迎え無為な日々を過ごしていた男は、ある女性目当てに毎朝のラジオ体操に参加するようになる。
感想
妻に先立たれ、定年を機に一人娘にも愛想をつかされてしまって途方に暮れていた男が、ラジオ体操をきっかけに前向きに生きるようになる物語。まずラジオ体操を行う場所が良かった。房総半島の最南端にある野島崎公園というところでロケ撮影が行われたようだが、目の前に海が広がる気持ちの良い岬。こんな所ならラジオ体操をする気になれそうだなと思えるような絶景だった。主人公の住む家の周辺は若干夜道が心配だが自然が溢れており、近くには賑やかな商店街もあって、なかなか住みやすそうな街だった。
そんな場所で行われるラジオ体操に参加するようになった主人公。演じる草刈正雄が背が高く彫りが深いものだから、初めてラジオ体操に参加した時の黒のニット帽にジャージ姿という出で立ちは、まるで「ロッキー」の時のスタローンのようで面白かった。
主人公は、喫茶店を営むワケありそうな和久井映見演じる独身の中年女性目当てに体操に通うようになるのだが、喫茶店経営者がラジオ体操の会を開くというのはいいアイデアかもしれない。体操後に皆で自分の店でモーニングでも食べてもらえば経営が安定するし、早起きの年配の人たちにとっては交流の場ができるし健康にもいい。2,3日姿を見せなければ皆が心配して孤独死なども防げるかもしれないしで良いこと尽くめだ。良い地域貢献となりそうだ。
やりがいを見つけた主人公は張り切りすぎてしまい、やがてはラジオ体操のグループに不和をもたらしてしまう。主人公は定年まで無遅刻無欠勤で通した真面目な性格だからそれが仇になってしまったという理由付けがされているのだが、あまりの暴走ぶりにいくらなんでもそれだけでは全然納得できなかった。自分の信念を他人に押し付けようとする姿は真面目というよりも、もはや狂気だった。会社員時代もこんな風に仕事をしていたのだとしたら閑職で終わるわけなどなく、重役かクビかのどちらかになってなければおかしいだろうと思ってしまった。
その他にも、みんなでラジオ体操がしたいからと全然乗り気じゃない人まで強引に動員しようとするのも意味が分からなかったし、父娘げんかしている時に他人がしゃしゃり出てきて片方を平手打ちをするのは、やり過ぎというかただの暴行だろうとか、色々と納得できないシーンが多かった。全体としては登場人物たちのキャラクターも良く、コミカルな部分もあって雰囲気は良く面白く見られるのだが、肝心のメインストーリーが引っ掛かってしまう描写ばかりで、純粋に楽しむことは出来なかった。
スタッフ/キャスト
監督 菊地健雄
出演 草刈正雄/木村文乃/きたろう/渡辺大知/徳井優/諏訪太朗/川瀬陽太/片桐はいり/余貴美子/小松政夫/平泉成/和久井映見