★★★☆☆
あらすじ
ある殺人事件が、「三億円事件」とつながっていると気づいた定年間近の刑事とその相棒の若手刑事。
感想
そうそうたるベテラン俳優たちが、濡れ場も含めて熱演している。全共闘時代を振り返るような内容でもあるので、濡れ場は若かりし頃を思い出させるような役割があるのかもしれない。枯れた年寄りではなく、まだ情熱を秘めていることを表してもいて、皆に人間味を感じる。
そんな大活躍するベテラン陣だったが、回想シーンでの夏八木勲の若作りの風貌は、コントじみていて笑ってしまった。
一つの殺人事件をきっかけに、三億円事件の真相に迫る物語だ。ただ事件の大体の概要は割とあっさりと明かされる。その代わりにクローズアップされるのは、身内が関与していたため、事件の真相を闇に葬り去ろうとした警察の組織的な隠ぺい工作だ。真相を探ろうとする奥田瑛二演じる主人公らの前に立ちはだかり、捜査の邪魔をする。
しかし、警察官本人が関わっていたならまだしも、その身内が関わっていただけで組織全体を挙げて揉み消そうとするのか、と思ってしまった。その当人は揉み消して欲しい気持ちで一杯だろうが、それ以外の全警察官は全く関係ない。粛々と捜査、逮捕をしてしまえばいいだけだ。
全然納得できないが、こういった事は今でも普通に行われている事で、なんならそうした不正を告発することは悪、とまでみなされるような風潮もある。そんな話を耳にするたびに「組織を守る」ってなんだよ、と思ってしまう。
その後、次々と殺人事件が起き、最初は仲間割れかと思われていたのだが、事件は意外な展開をみせる。それで盛り上がってもおかしくはないのだが、実際は三億円事件の真相を明らかにすることがメインで、現在進行形で起きている連続殺人事件に関してはどこかおざなりな印象になってしまっている。もうちょっとしっかり描いてくれていたら、真相に気付いた主人公のように驚くことができたかもしれない。
どことなく昭和を感じる暗くじっとりとした人間模様で映画は締めくくられる。全編に監督の反権力の姿勢が強く感じられる映画だった。若手刑事を演じた渡辺大は、ベテラン俳優に囲まれて、どうもいまいちな演技だったが、ラストでとてもいい表情を見せていた。この顔を撮るために彼を使ったのなら正解だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 伊藤俊也
脚本 長坂秀佳
原作 閃光 (角川文庫)
出演 渡辺大/奥田瑛二/川村ゆきえ/武田真治/矢島健一/菅田俊/烏丸せつこ/熊谷真実/中田喜子/かたせ梨乃/宅麻伸/夏八木勲
音楽 大島ミチル