★☆☆☆☆
あらすじ
尻すぼみ気味で長期連載を終えた漫画家は、漫画界をめぐる状況に苛立ち、なかなか次作に取り組めないでいた。
斎藤工主演、趣里、MEGUMIら出演。竹中直人監督。浅野いにおの同名小説が原作。128分。
感想
長期連載を終えるも、なかなか次作に取り組めない漫画家が主人公だ。売れてる漫画にくだらないと文句を言い、それで良しとしている出版社にも不満を募らせている。そしてそんな状況の中で、自分は何を描けばいいのかと悩んでいる。
業界批判は、プロを目指す若者や売れない作家がしがちだが、主人公の場合はちゃんと売れたので意味合いが違う。売れてる漫画家にも悩みはあるということなのだろう。彼らにしか見えない景色がある。
主人公はその不満をあちこちで吐き出す。売れっ子担当の編集者として忙しい妻には八つ当たりし、取材の記者にも嫌味を言う。そして満たされない思いは風俗嬢に癒してもらっている。傲慢でひとりよがりでわがままな、イヤな奴だ。
このイヤな奴ぶりが面白ければいいのだが、どこででも見られるようなありふれたもので、ただそれを見させられるだけの時間はなかなか辛いものがあった。
また彼の苛立ちも、漫画至上主義的な思いから来ているのだろうが、創作者ならきっと誰でも抱えているもので、それを大げさにアピールしているだけに過ぎない。子供じゃないのだからと言いたくなる。それも含めたクリエイターのエゴを表現しているのだろう。
そういうわけであまり主人公に関心が持てず、ただ眺めるだけになってしまった。そして、そうなった時にどこにも逃げ場がないのが辛かった。登場時には面白みを感じた主人公のキャラも、次第にプログラミングされた人間みたいに薄っぺらく見えてきたし、他の登場人物たちにも特に魅力は感じない。
映像や音楽といったそれ以外の要素もほどほどで、ここに注目していれば時間をしのげるというものがない。強いていうなら、部屋の乱雑具合がリアルだったくらいか。おかげで後半は、何度も残り時間を確認してしまうくらい体感時間が長く、まだ続くのかとしんどかった。
つらそうな主人公だが、漫画家を続けるのか辞めるのか決めればいいだけだし、そうはいってもどうせ辞めないのは分かり切っているので、だったらさっさと描けよと苛立ってしまう映画だ。こういう言い草もまた、「分かってないな」と本人をイラっとさせるのだろううが。
スタッフ/キャスト
監督 竹中直人
脚本 倉持裕
製作/出演 MEGUMI
出演 斎藤工/趣里/山下リオ/土佐和成/吉沢悠/黒田大輔/永積崇/信江勇/安井順平/宮﨑香蓮/玉城ティナ/安達祐実
音楽 志磨遼平
