★★☆☆☆
あらすじ
謎の集団により世界各地を攻撃できるデバイスを奪われてしまったCIAは、死んだとされていたNSAのエージェントに協力を依頼する。
シリーズ第1作の主演ヴィン・デイーゼルが復帰した第3作。原題は「xXx:Return of Xander Cage」。107分。
感想
危険なエクストリームスポーツを得意とする男が、国家の危機のために戦う物語だ。仲間とともにドニー・イェンが演じるボス率いる、敵チームの本拠地に乗り込んでいく。
ただ、もともと危険なことを好んでやっているような連中なので緊張感がない。早くデバイスを取り返さなければ、という義務感や焦燥感も見えない。それよりも、いかに自分がこの危険な状況を楽しんでいるのかをアピールしようと、一生懸命カッコつけているだけのように見えてしまった。まるで思春期をこじらせた中学生みたいだ。
確かにヒーローの動じない余裕綽々ぶりがカッコよく感じることはあるのだが、その場合は小粋でなければいけない。だが主人公はジョークもつまらなくて魅力がなく、むしろダサい。カッコつけてばかりいないでさっさと仕事しろよと何度もツッコみたくなった。ついでに言うと、おしゃべりな武器サポートの女性のスベりっぷりも終始酷かった。
やがて敵のチームの素性が判明する。しかしその後も両チームが競い合うように戦う意味がよく分からなかった。目当てのデバイスに対する敵のボスの考え方が違ったからだろうか。そもそも彼が何をしたいのかも見えない。デバイスを誰も悪用できないように自分で管理したかっただけなのか、何らかの目的で使いたかったのか。彼のチームの現在の立ち位置なども含めて何もかもが曖昧で、どう解釈するべきなのか困ってしまう。
主人公が余裕綽々のまま、当初の目的は果たされる。これだけでは終わらない雰囲気がプンプンとはしていたが、それでも大クライマックスの前の中クライマックスくらいの盛り上がりは作って欲しかった。あまりにもあっさりと片が付いてしまったのでなんの面白みもなかった。
そして予想通り、事件の背景には巨悪がいたことが判明し、両チームが協力して戦うことになる。ここでようやく皆の顔から余裕が消えて、緊張感が出てきた。そして薄々気づいてはいたが、はっきりしてくるのは、登場人物多すぎ、ということだ。
チームメンバーの役者には、中国、インド、タイなど各国のスターが割り当てられていているが、明らかに何人かは、なんでいるの?必要?と思ってしまうような存在だった。皆に見せ場を与える努力をしていたのはエラいが、メンバーありきでやっている印象が強い。焦点がぼやけまくりだ。
そしてこの大クライマックスも、たいして盛り上がることなくあっさりと終わってしまう。これは強大な敵が不在だったからだろう。一応、特殊部隊の男がラスボスみたいな扱いだったが、彼はすでに主人公に一度小馬鹿にされて軽く扱われていただけに、小物感がすごかった。ここはどう考えても彼ではなく、ドニー・イェンがラスボスとして立ちはだかるべきだった。
最後は予定調和の大団円だ。この他にもブラジルのサッカー選手、ネイマールや前作主演のアイス・キューブなども登場し、出演者の顔ぶれにはずいぶんと力を入れているようだったが、内容はおざなりな映画だった。観客は動員できてもその満足度は低そうだ。
スタッフ/キャスト
監督 D・J・カルーソー
製作 ジョー・ロス/ジェフ・キルシェンバウム/サマンサ・ヴィンセント
製作/出演 ヴィン・ディーゼル
出演 ドニー・イェン/ディーピカー・パードゥコーン/クリス・ウー/ルビー・ローズ/トニー・ジャー/ニーナ・ドブレフ/トニ・コレット/ロリー・マッキャン/トニー・コンザレス/マイケル・ビスピン/アイス・キューブ/ネイマールJr.
音楽 ブライアン・タイラー/ロバート・ライデッカー
関連する作品
前作 シリーズ第2作bookcites.hatenadiary.com