★★★☆☆
内容
才能よりも、成功のために重要な能力として注目されるようになったGRIT(やり抜く力)について紹介する。
感想
最近注目されるようになった「やり抜く力」について解説した本。コツコツと努力して勤勉だと言われる日本人には得意な能力かと思ったが、そうでもないようだ。ただやみくもに努力するのではなく、しっかりとした目標を持ち、綿密な計画を立てた上で努力することが大事だと説かれている。だから単純に「やり抜く力」というよりも、「上手くやり抜く力」と言った方がいいのかもしれない。
「明日はきっといい日になる」と「明日はもっといい日にしてみせる」では大ちがいだ。
p226
本書では、外国人スポーツコーチが長時間だらだらと練習する日本チームの練習風景に衝撃を受けた、というエピソードが紹介されている。日本人は何も考えずにただがむしゃらに一生懸命やればいいと思っている節があって、「上手くやり抜く力」の「やり抜く」の部分は出来るのだが、「上手く」に対する意識はかなり低いかもしれない。
様々な実験データを基に、本書ではいかにやり抜く力が重要なのかが解説されていく。ただ読んでいて思うのは、成功者の過去を調べるとやり抜く力が高かった、というのは、単なる結果論なのではないかという事だ。やり抜く力があったから成功したと言われても当たり前の事に思えてしまう。そんなやり抜く力よりもまずは、やり続けたいものを見つける力、それが上達する方法を見つけ続ける力、成功するために足りないものを把握する力、といったものがあるかどうかの方が重要な気がする。その力があった上で、やり抜く力があればこそ成功できる。ただそうは言っても、やり続けたいものを見つける力などのそれぞれの力を身に着けるためには、ある程度の根気、やり抜く力が必要になってくるとは思うが。
本書では、やり抜く力を身に着けるには外部によるサポートも重要だとしている。部下の教育や子育てで、やり抜く力を身に着けさせたいと考える人も多いと思うのだが、「まずは自身の行動でそれを示すことが大事」と述べられていて、思わず苦笑いしてしまった。自分のことを棚に上げて他人にあれこれ言っても、聞いてもらえるわけがない。当たり前と言えば当たり前なのだが、何かうまい方法があるのではないかと期待してしまった。まずは自分がしっかりとやることに集中していれば、自然と周囲はついて来るということか。分かるけど、斬新さはゼロだった。
「やり抜く力」について書かれた本だが、この本の肝は、やり抜く力が大事ということよりも、才能はいくらでも伸ばすことが出来る、という事実だろう。才能は生まれながらに決まっていて、すべてはそれで決まってしまうと思い込んでいたなら、自分に能力はないと感じた瞬間にすべてをあきらめてしまう。だからまずは、自分の能力はいくらでも高めることが出来るというマインドセットを身に着けることが重要で、それさえ出来れば、あとは勝手に「やり抜く力」も身に付くような気がする。
著者
アンジェラ・ダックワース
登場する作品
「遺伝的天才(Hereditary Genius And Inquiries Into Human Faculty And Its Development)」
「漫画家になるには(Learning to Cartoon)」 シド・ホフ
「子供は如何に育てらるべきか」 ジョン・ワトソン
What the **** is Normal?! (English Edition)
「世界と僕のあいだに(Between the World and Me (English Edition)」