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「四畳半襖の裏張り」 1973

四畳半襖の裏張り[DVD] [レンタル落ち]

★★★☆☆

 

あらすじ

 大正時代。花街の料亭で待つ一見の男の元にやってきた芸者。69分。

 

感想

 芸者である主人公とその客を中心に、色事にまつわるあれこれが断片的に描かれる。ストーリーはあまりなく、ただ情景だけが映し出されているような感じだ。だが米騒動やシベリア出兵など不穏な空気を感じるこの頃の世相がよく伝わってきて、そんな世間と隔絶したような花街の、情緒あふれる雰囲気も良く感じられる。どこか鈴木清順の大正浪漫3部作と雰囲気が似ていた。花街はそういった俗世間の煩わしさを忘れるためにあるような場所と言えるだろう。

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 主人公と彼女に会いに来た一見の客との一晩の様子が描かれ、その合間に他の人物たちの人間模様が挿入されていく。主人公らの行為は延々と描かれ続けるので、これだけで最後までそのままいってしまうのかと少し驚いていたが、さすがに中盤でそれは終わって次の展開が始まった。これだけで映画が終わったら斬新だったかもと思わなくもないが、さすがにそれでは映画が持たないのだろう。

 

 登場人物たちの中では、軍人の男と彼と同郷だというなじみの芸者のカップルが、登場時間は少ないながらもコミカルで良かった。男はいつも時間がないと焦っていて、女がやって来るとすぐに帰らなければいけないと立ち上がる。もうちょっと余裕を持って動くとか、女に早く来るよう頼んでおくとか色々やりようはあるだろうと思ってしまうが、なぜかいつもタイミングが合わない男女というのはいるかもしれない。そして男を演じた粟津號の走り方が可愛かったり、女を演じた丘奈保美の人力車に乗って揺れるブスッとした顔が面白かったりして、印象的なカップルだった。

 

 

 最後はブツっと切れたかのように突然終わるが、これは原作に倣っているのだろうか。読んでいないが原作も唐突に終わるようだ。色事に造詣が深い人ならうんうんと頷いたり、ニヤリとできるのかもしれないが、そうでない人はただ眺めるだけになってしまいそうな映画だ。だが短い映画だし良い雰囲気を醸し出しているので、なんだかんだで全然見れてしまう映画でもある。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 神代辰巳

 

原作 四畳半襖の下張り

 

出演 宮下順子/江角英明/山谷初男/丘奈保美/絵沢萠子/芹明香/東まみ/粟津號

 

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