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「幸福について 人生論」 1958

幸福について―人生論 (新潮文庫)

★★★☆☆

 

 幸福について考察する本。

 

 まず各章が長く改行も少なくて、なかなか読み進めにくい。なので一旦読むのを切り上げるタイミングが難しい。こう考えると数ページの章で構成される最近の新書は、よく工夫されているということがよく分かる。

 

 幸福は掴み取るものだ、とかいろいろな言い方があるが、この本の中では積極的にそういうことをするな、とただただ消極的な意見。確かに期待をして積極的に動けば失望することも多い。確かにそうだけど、でもなぁ、って思ってしまう。

 

 希望を持って積極的に動いて失望するくらいなら、最初から動かないで失望のもとを絶ってしまえばいい。そうすれば期待が裏切られることはない。そして動かないということは、周りからの刺激がなくなるということだから、そうなると孤独になる。その時その孤独とうまくやれれば幸せなんじゃないか。誰かに邪魔されたり裏切られることもない、自分自身がどうあるかで幸福であるかどうかが決められる。

 

 確かに人との付き合いで幸せを感じることは少ないかもしれない。会話をしていても楽しいと思える人はそうそういないし、親しくなりたいと思えるような尊敬できる人もそうはいない。それ以外の時はつまらない会話に愛想笑いをしたりするだけの、ある意味不幸な時間だ。

 

 孤独とうまく付き合える人とそうでない人がいることも確かだ。常に周りに誰かいないと落ち着かない人と、ずっと一人でも平気な人。愛想笑いの不幸な時間が続くくらいなら一人でいた方がましだと思ってしまう人。

 

 そう考えるとニートは幸福だ。一生お金に困らなければ。

 

 でもこうまで消極的な事言われるとこれは皮肉なのか、と疑ってしまう。高尚過ぎて人づきあいもしない変人をからかっているような。「そりゃ幸せでしょうねー」と皮肉を言っているような。

 

 さすがにそれは多分こちらの考え過ぎだが、馬鹿なもの同士がつるんで人の悪口を言ったり、くだらないことに熱を上げたりしていることに対して、筆者は苦々しく思っていたのだろう。彼らと付き合うことで自分の高尚さを損なわれたくないと。

 

 そんな彼が、幸福を考える上で一番気にする必要のない事は、他人からの評価を気にすることだ、とした上で、その理由を延々と大きくページを割いて述べているのがなんだか可笑しかった。実は評価されたかったんでしょ、と。正当に評価できる人はそうそういないから、すぐには評価されないが、時代が経てばそういう人が現れ出して、いつかは評価されるようになるから心配する必要はない、なんて言いながら、自分のような人間はさらに評価されるのに時間がかかる、なんて泣き言を言ったりして。

 

著者 ショーペンハウアー

 

幸福について―人生論 (新潮文庫)

幸福について―人生論 (新潮文庫)

 

 

 

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