★★★☆☆
内容
人間のモチベーションの新たな段階の紹介。
感想
人が生理的欲求に基づいて行動することをモチベーション1.0、そして、いわゆるアメとムチという外的要因に基づいて行動することをモチベーション2.0と定義づけている。現在の会社組織で人々を動かしているのはこのモチベーション2.0だが、このやり方では様々な弊害が出ていることをまず説明している。
確かにアメとムチでは、アメをもらえないならやらないとか、こんな少しのアメじゃやる気しないとか、常にアメを与え続けないと人々のモチベーションを保てなくなる。さらには、アメのためにやっていると思われるのは心外だからもうやらない、というなかなかひねくれた考えを持つ人も出てくる。とにかく、アメとムチだけで人のモチベーションを保つことは難しい。
それに変わってモチベーション3.0として著者が説くのは、内的要因に基づく動機付けである。「自律性」「熟達」「目的」の要素があれば、人々は自発的に動く。ちょうど、子供たちが誰に言われるわけでもなく、夢中で遊びに興じているように。今後はこのような動機づけが重要になってくる。
本書では自分に対して、そして組織や教育の場でこのモチベーション3.0を活用していくのか、その方法が紹介されている。ただ、個人的には自分に対してモチベーション3.0を意識しなければいけないようでは駄目なような気もしてしまうが、好きなことと得意なことは違うという前提なのかもしれない。他者に対しての方法はなかなか参考になる。
読みながら、安い給料で過労死してしまうほど働いてしまう日本の労働者はなんなのだろうなと考えてしまった。ひどい労働環境に文句もなく働くというのはモチベーション3.0と言えなくもないが、その割には楽しくなさそうでもある。いまだに封建社会のような、まさか自分に権利があるとは思っていない、言われたことをやるだけという労働観なのかもしれない。ここからモチベーション3.0まで行くには、かなり長い道のりが必要なのかもしれない。
著者
ダニエル・ピンク
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (講談社+α文庫)
- 作者: ダニエル・ピンク,大前研一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/11/20
- メディア: 文庫
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