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「セイラー教授の行動経済学入門」 2007

セイラー教授の行動経済学入門

★★☆☆☆

 

 現実世界では起きているのに従来の経済学の理論では説明できない事象について考察する。2017年にノーベル経済学賞を受賞した著者による本。1998年に出版された「市場と感情の経済学――「勝者の呪い」はなぜ起こるのか」を改題。

 

 元々は経済学会の専門誌に連載された論文ということで、明らかに専門誌を読むような人向けの内容。専門家に向けてはこれ以上噛み砕いて説明するとクドく感じてしまうのかもしれないが、一般人には歯ごたえありすぎ。辛くて後半は噛まずにそのまま飲み込むだけだった。

 

 実際にこの分野を学ぼうとしている学生や論文まで読みたい人にとっては入門編になるのかもしれない。後半は株式市場や為替相場などの話もあるので、この手の数字を交えた投資関連の話が好きな人も楽しめるのかも。

 

 一般的な経済学の理論からは外れるが、それでも一定の傾向が見られる事象に注目する事から行動経済学は生まれたと言える。人間は合理的な行動をするという前提で研究をしている普通の経済学者にとっては、異論を唱える行動経済学者は厄介な存在だったんだろうなと考えるとちょっと面白い。理論から外れる事象は単なるイレギュラーとして過小評価してしまうバイアスが、普通の経済学者には働いてしまっていたのだろう。

 

 そして原題や旧邦題にもある「勝者の呪い」の話も面白かった。入札の勝者は適正価格よりも高い金額で落札することになるので損をするか、予想以下の収益に落胆することになる。これらは各業者の経済学的に不合理な行動によるものだが、この環境で一社だけが合理的な行動をとると絶対に落札できないというジレンマに陥ってしまう。なので廃業するか、もしくは不合理な行動による「勝者の呪い」の仕組みを競合相手にも教える必要がある、という結論になるのが興味深かった。一人勝ちはできず、皆の協力が必要という不思議な結論。

 

 ノーベル賞も取ったことであるし、著者の本を色々読んでみようと思って最初にこれを手にしたのだが、引き続き他の著作を読むには腰が引けてしまう内容であった。レビューなどを読む限り、他の著作は一般向けの内容で大丈夫なようだが。

 

著者 リチャード・セイラー

 

セイラー教授の行動経済学入門

セイラー教授の行動経済学入門

 

 

登場する作品

道徳感情論 (講談社学術文庫)

ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉 ―株式投資の不滅の真理

雇用、利子および貨幣の一般理論〈上〉 (岩波文庫)

投資価値理論 (ウィザードブックシリーズ)

新賢明なる投資家 上~割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法~《改訂版――現代に合わせた注解付き》 (ウィザードブックシリーズ)

 

 

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