★★★☆☆
あらすじ
失業と離婚を同時に味わったカメラマンが、一旦東京を引き払い、南の島で今後の人生について考える。
感想
30代後半にして大きな人生の岐路を迎えたカメラマンが、一路南の島に向かう。沖縄からさらに飛行機、小舟を乗り継いでたどり着くような島だ。そこで海岸で暮らす4人組と意気投合し一緒に暮らし始めるが、ある日4人組は彼の全財産を盗み、姿を消してしまう。
このあたりまでは分かる。今まであくせく働いてきたのだから、しばらくはのんびり暮らしてみてもいいはずだと考え、人の少ない南の島へ。そして、しばらくは楽しく過ごすが、盗難により高揚していた気分が一気に冷めてしまう。ここでどうするか。主人公は警察に届けることもなく、海辺に残った。
ここから主人公の意図が良くわからなくなる。どうにでもなれと思ったのか、どうとでもなると思ったのか。その後はただダラダラと途中から加わった仲間たちと仲良く暮らすのみだ。もう東京に戻る事は考えなかったのか、もうこの海岸で暮らしていくことにしたのか、そのあたりがよく分からず、もやもやしながら主人公を見守るしかなかった。ただ惰性で暮らしていただけなのかもしれないが。
もう盗まれてしまった自分の荷物になど執着はないのかと思っていたら、姿を消した4人組の噂を聞きつけてすぐに奪い返しに行ったのも解せない。それなら最初から警察に届けて、すぐに捕まえてもらえばよかったのに、と思ってしまった。
ラストは「さらなる自由へ!」みたいな、希望に満ちた感じのエンディングに仕上げているが、あまりに無謀で楽観的すぎて寒気すらした。主人公は仲間とつるんでいるだけで一人では生きていけそうな感じはしなかったし、仲間との突然の別れなのに、皆ヘラヘラ笑っていてなんか怖かった。
主演の阿部サダヲと他の出演者とで繰り広げるシーン自体はそれぞれ面白いのだが、全体としてみると何がしたいのかよく分からないストーリーだった。冷静に考えると、ホームレスのおじさん達の話でもある。彼らの底抜けの陽気さが第三者には滑稽で、逆に悲しみを感じさせる切ない物語なのかもしれない。ドン・キホーテのような。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 細川徹
出演 阿部サダヲ/永山絢斗/貫地谷しほり/佐々木希/ピエール瀧/浅野和之/斉木しげる/大水洋介