★★☆☆☆
あらすじ
20世紀初頭の上海。刑務所にいた日本人詐欺師が現地の反政府組織から協力を求められる。104分。
感想
「冒険活劇」という言葉が似合いそうな異国情緒あふれる上海が舞台だ。街の雰囲気はよく出ているが、物語の入りが良くなかった。捕まった天才詐欺師が刑務所で命を狙われ、助けてくれた反政府組織に協力を頼まれるのだが、正直どうして全面的に協力する気になったのかが良く分からなかった。
一応は、彼らの熱意にほだされて、ということになっているが、主人公はそんな熱いハートを持った奴だったっけ?と戸惑ってしまった。そういうのが全然描けていないまま、物語はどんどんと進行していく。
普通は物語が進むにつれて、どんどんと主人公に肩入れしていきたくなるものだが、この映画ではえ、そんな人だったの?という事実が次々と出てきて、親近感よりもむしろ距離を感じるようになっていく。もしかしたら得体の知れない謎めいた男として処理したかったのかもしれないが、それなら愛嬌だったり別の面で親しみを持てるものが欲しかった。
主人公たちの騙す相手は渡辺謙演じる日本の軍人だ。いつもの存在感のある演技で、敵役がすごいと映画が締まるのが良く分かる。ただ、それ以外の登場人物たちにあまり見せ場がなかったのは気の毒だった。
詐欺師の映画では定番の大どんでん返しが最後にあるのだが、正直そんな事ができるなら他のやり方で反政府活動を盛り上げることが出来るんじゃないの?と思ってしまった。
そしてエンディングかと思いきや、ここからさらに15分ほど続く。これが完全に蛇足だった。全然必要なかったと思うのだが、もしかしたら制作側も大どんでん返しが弱いと感じて、もうひと盛り上がりを狙ったのかもしれない。だがこのグダグダの最後の15分のおかげで、かなり印象の悪い映画となってしまった。
スタッフ/キャスト
監督 大森一樹
脚本 成島出
原作 T.R.Y.(トライ)
出演 織田裕二/邵兵/石橋蓮司/伊武雅刀/夏八木勲/ピーター・ホー/今井雅之/松岡俊介/金山一彦/市原隼人/松重豊