★★★☆☆
内容
著者が世界各地で出会った様々な画家の作品について書いたエッセイ。
感想
ゴーギャン、ゴッホ、マティスなどの画家ごとに特に1枚の絵画をピックして、それについて書かれている。取り上げられる絵画はちゃんとカラー印刷されたものが収録されており、それを見ながら読むことが出来るので安心だ。
絵の見方なんて自由でいいと思うのだが、それでもこうやって他の人の感想をよんだりすると、そういう見方もあるのか、という発見があって面白い。個人的には今まであまり果物などの静物画やなにげない風景画に心を動かしたことがなかったので、この窓がいいとか、美味しそうだ、という感想は新鮮だった。単純に自分は分かりやすいものにしか反応できないレベルだという事もあるのだろうが。
取り上げられる絵の中には見てもあまりピンとこないものもあるのだが、きっとプリントされたものだからだろう。有名な絵を見に行くと、今まで本などで見ていた印象と全然違って驚くことがある。やはり実物を見るという事は大事だ。著者のように世界中に散らばっている名画たちをこの目で見て歩きたい。
私は、自分がちっぽけだったことを思いだした。ちっぽけな身体に、でもちゃんと、ちっぽけな魂を抱えていたことを。
p97
著者の文章を読んで作品の事を知るのと同時に、著者自身の事も見えてくるというのが不思議な感覚だ。同じ絵を見ても人それぞれ反応は違い、その反応によってその人が見えてくる。絵画の中の小さな子供たちを見て、自分の幼い頃を振り返り、確かにあった魂までも思いだす。あやふやだったものをしっかりと確かなものとして再認識する感じ。小説家っぽい。
久しぶりに美術館に行きたくなる。
著者
江國香織
登場する作品