★★★☆☆
内容
コロナ対策で世界的な注目を集めた台湾の若き天才IT相、オードリー・タンの様々な顔を紹介する。
感想
オードリー・タン、彼女については台湾のIT担当大臣としてマスクマップを始め、ITを活用して臨機応変にコロナ対応した天才ハッカーという程度の知識しか持ち合わせていなかったが、一人で物事をどんどんと進めていくタイプではなく、色々な人々を巻き込みながら皆と一緒に物事に取り組むタイプだというのは意外だった。多くの人が関われば関わる程、いいものになっていくという考え方の人のようだ。だから、皆を置き去りにして一人で突っ走るのではなく、ITを活用してどんどんと情報を流すことで多くの人の参加を促そうとしている。そして激しい対立や言い争いが起きても、仲裁者としてそこから建設的な議論に導くことが出来るという人間力の高さにも驚いた。
誰でも、自分の行く道の上ではギフテッド(天から与えられた才能=天才)なのです。
p200
おそらく彼女の人間力、EQの高さは、幼少期のつらい体験が影響しているのだろう。子供のころ、彼女はIQ180以上と頭が良すぎて、家族を含む周囲とうまく付き合うことが出来ず、ずいぶんと苦労している。下手したら手間のかかる厄介な子供として扱われ、社会適応能力のない大人となってしまっていたかもしれない。だが両親の努力やよき理解者に恵まれたという幸運により、彼女は自分の能力を生かす道を見つけられた。そのことが分かっているから、誰も排除せず謙虚に皆と接しようとするのだろう。賞賛されてもただ周囲のおかげと謙遜する彼の姿は、自己評価は120点で手柄はすべて俺のもの、とひとり自画自賛していた政治家の小物感を際立たせてしまう。
それから独学で色々な事を学べてしまう彼女のような天才でも、優秀な高校の個性豊かな生徒たちとの交流が刺激となり、世界が広がったというのも色々と示唆的だ。どんなに天才でも一人では限界があり、その限界を突破するためには多くの人と交流し刺激を与え合う事が必要なのだ。だからこそ、彼女はこのような場をたくさん設けて、人々の成長を促し、どんどんと世界をよくしていきたいと考えているのだろう。
本の最後には、彼女を有名にした台湾のコロナ対策についての詳細な記述がある。オードリー・タンの名はほとんど全く登場しないので、本書の趣旨とは違う感じがしてしまうが、彼女同様、台湾政府が行政の透明化を図り、記者会見にも真摯に応じることで国民に対して徹底した情報公開の姿勢を示していることに感心してしまった。特に非常事態宣言の記者会見より非常事態の用事があるのか、まともに答えず途中で会見を打ち切ってしまうようなトップがいる国に住んでいると。積極的な情報公開どころか、逆に記録は残さない方針でブラックボックス化し、何かにつけて隠蔽しようとしている国に住んでいると。そりゃ政府に対する信頼度も違ってくるよなと思ってしまった。
台湾政府は、過去のSARS対策の失敗から学んで今回のような対応が出来るようになったそうだが、日本もちゃんと失敗を認めてそこから学ぶ姿勢に改めないと、どんどんと他国に置いていかれてしまうことになる。でも彼女のような天才が登場するのをただ待っているようではダメで、彼女の目指すような政府にするにはどうしたらいいのかを考える必要がある。どんな政府なら彼女のような有能な人物をIT担当大臣に任命することが出来るのか、それを想像してみるとわかりやすいかもしれない。
著者
アイリス・チュウ/ 鄭仲嵐
登場する作品
「矛盾集錦」 マーティン・ガードナー
「楽経」
「春秋」
「微軟陰謀」 単中杰/戴凱序
「選ばれざる道(The Road Not Taken)」 ロバート・フロスト
Gifted Grownups: The Mixed Blessings of Extraordinary Potential (English Edition)
「我的電脳探索」
「国語活用辞典」
「教育部国語辞典」
「玫瑰少年」 ドキュメンタリー映画
Networks of Outrage and Hope: Social Movements in the Internet Age
真理と方法 I 〈新装版〉: 哲学的解釈学の要綱 (叢書・ウニベルシタス)
Free As In freedom (English Edition)
「重編國語辭典修訂本(再編国語辞典修訂版)」
「中華語文大辭典(中華語文大辞典)」
「台湾客家語上擁護辞典」
「台湾閩南語常用語辞典」
「阿美語辞典(アミ語辞典)」