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「ブライトン・ロック」 1938

ブライトン・ロック (ハヤカワepi文庫―グレアム・グリーン・セレクション)

★★★☆☆

 

あらすじ

 イギリス・ブライトンに仕事でやって来た新聞社の男は、何者かに命を狙われていることに気付く。

 

感想

 観光地に仕事でやって来た新聞社の男が、命を狙われていることに気付いたところから物語が始まる。てっきり彼がいかにそれを防ぎ、どのように人違いだと分からせるのかを描くサスペンスかと思っていたのに、彼はそのまま殺されてしまった。その後は犯人の不良少年とその一味、そして犯人を捜す女の様子が中心となっていく。

 

 犯人の不良少年は、事件の目撃者を恐れ、仲間の裏切りを恐れている。だが、目撃者の少女の口を封じるためには結婚しなければならないとまで考えるのは、いくらなんでも心配性すぎるだろうと思ってしまった。

 

 

 しかも彼は何かと人を殺して解決しようとする。犯人を捜す女がどのように不良少年にたどり着くのかを描くミステリーにしては、話が飛躍してばかりで方向性がよく分からなかった。女が占いで手がかりを得たのも納得がいかない。中盤くらいまでは、これは何を描こうとしているのだろうと手探り状態が続いた。

 

 だが、悪とは何か、宗教とは何か、と自問自答する不良少年の様子から、ああこれはドストエフスキー的なやつなのだなと段々わかってきた。そして面白くなってきた。不良少年が妙に性的なことを嫌悪したり、犯人探しをする女を激しく軽蔑していたのも、彼が子供だからかと思っていたが、それだけでなく敢えて分かりやすく描いていたのだなと気づいた。

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 愛されていないと薄々分かっていながらも、不良少年に最後まで付いていこうとした目撃者の少女の姿が印象に残る。彼女を待ち受けているものが怖い。

 

 最初からもう一度読み直したら、より深く理解できそうな小説だ。

 

著者

グレアム・グリーン

 

 丸谷才一

 

 

 

登場する作品

「デイヴィッド・コパーフィールド」 映画

「友だち座(The Good Companions (English Edition))」

「ソレルと息子(Sorrell and Son (English Edition))」

「夫婦愛(結婚愛 (1959年))」

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