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「影の車」 1970

影の車

★★★☆☆

 

あらすじ

  昔の知り合いの女性と不倫関係となるも、なかなか懐かないその子供に猜疑心を持つ男。

 

感想

  冷めた夫婦関係に寂しさを感じる男が、たまたま再会した女性と不倫関係になる。映画のメインとなる話はまた別なのだが、この二人が関係を深めていく過程が大きな時間を割かれて描かれていく。そもそも既婚の男を家に誘う女もどうかしてるし、そんな誘いにノコノコついていく男もどうかしている。もうこの時点でその後の展開は必然だったと言えるだろう。男が妻に対する後ろめたさやためらいを感じさせず、どんどんと大胆な行動を取るようになっていくので、なぜかこちらが妙にドキドキしてしまった。ただあまりにもスムーズに事が進みすぎるので、途中で夫婦間の冷や冷やするようなやり取りがあっても良かったのかもしれない。

 

 それからあまり関係ないが、二人の濡れ場シーンはそこまでするならもう見せちゃったほうがいいのでは、と思ってしまった。そのギリギリで隠す技術の必死さが気になってしまった。

 

 

 不倫関係を深める男にとって厄介なのが、女の六歳になる息子だ。なかなか自分に懐いてくれないと嘆いているが、いつも子供が反抗的な態度を取るわけではないのが難しいところだろう。普段は素直に言う事を聞くのに、時おり反発心を感じさせるような不可解な行動を取る。このあたりはホラー映画ぽくて少し面白かったが、子供なんてまだ気持ちを伝える技術が未熟なのだから、他人からしたら何を考えてるかよく分からないのは当然かもしれない。しかしこの子供は斧や刃物を平気で使ったり、いつも一人だったりと確かに気味が悪いが、この時代の子供だとそれぐらいは普通なのだろうか。

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 ただ、実は男はそんな子供の気持ちが分からないでもない。彼も子供のころに独り身の母親に会いに来るおじさんが嫌いだった記憶がある。ときおりそんな男の幼少期の思い出を振り返りながら物語は進む。この時の映像がひどくノイジーに加工されていて、かなり見づらく辛かった。ただおそらくこの演出で、男の幼少期に何やら暗い秘密があることを示唆しているのだろう。

 

 終盤、子供に対する猜疑心に囚われた男は遂に事件を起こしてしまう。その取り調べで刑事が、子供に殺意なんかあるわけないだろうと断言していて反感を覚えてしまった。体力や知力が未熟で成功することはまれだが、普通に子供にだって殺意はあるだろう。ただ、ここで男の幼少期の秘密を持ってくるのは見事だった。正直、示唆されていた秘密に関しては早い段階で見当がついてしまっていたのだが、まさかここにつながるとは思っていなかった。

 

 それでも、男の被害妄想だった、というのは違うような気がして、自分には子供も男と同じような事をしようとしたように思える。何の種明かしもなくそのまま映画はエンディングを迎えるので、そこはグレーのままで観客の想像に任せるという事なのだろう。

 

スタッフ/キャスト

監督 野村芳太郎

 

脚本 橋本忍

 

原作 影の車 (角川文庫)

 

出演 加藤剛/岩下志麻/小川真由美/芦田伸介/谷よしの

 

音楽 芥川也寸志

 

影の車

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  • 岩下志麻
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影の車 - Wikipedia

 

 

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