★★★★☆
あらすじ
遺伝子操作で長寿を手に入れるも生殖能力を失ってしまい、滅亡の危機を迎えた人類は、地下に住む人工生命体の調査のためにある男を送り込む。
ストップモーション・アニメーション映画。
感想
人類が失った生殖能力再生のカギを求め、かつて創造するも敵対してしまった地下開発用の人工生命体「マリガン」を調査するために地下深くに送り込まれた男が主人公だ。
ただ、主人公はロボットぽく、頭部だけになっても生きているので、人間は体を捨てて「自我」のみで生きるようになったのか、また、彼が出会った生物のどれが「マリガン」なのかなど、設定がいまいちよく分からない部分があった。
だが、登場する生きものたちや背景となる舞台の作り込みが見事で、それを堪能するだけで十分に楽しめてしまう。ストップモーション・アニメの動きも良く出来ている。これら全部を監督はほぼ一人で製作したのかと、素直に感心してしまった。いい意味で狂気を感じる。しかもこの膨大な手間と時間がかかる方式のものを、最初から三部作として構想していたらしいというのも、いい意味でどうかしていて好きだ。
主人公の目的は地下世界を調査する事だが、地下にたどり着いた時点で事故で記憶を失ってしまったために、そのような動きは全くない。代わりに描かれるのは、地下世界で出会った様々な「マリガン」たちと主人公が交流する様子だ。頼まれごとをしてお使いに行ったり、謎の生物と戦ったり、除け者にされている幼いマリガンを助けたりと、いくつものエピソードがユーモラスに描かれていく。
バラエティに富んだエピソードたちで、笑えたり泣けたりと様々な感情を引き起こす。エピソードごとに分割して、15分くらいのミニドラマシリーズにしても良さそうだ。
どこかとぼけた雰囲気が漂う映画だが、戦いのシーンでは赤い血が流れて鮮烈なイメージとなるのが印象的だった。物語が引き締まるいいアクセントになっている。クライマックスの巨大生物との対決も、この鮮烈な赤と、見ごたえのあるアクションで盛り上がった。
終盤に主人公はようやく記憶を取り戻し、本来の目的のために動き出すところでエンディングを迎える。三部作の一作目でもあり、まだ何も始まっていないと言える段階ではあるが、それでも魅力的な世界観のおかげで、全然満足できてしまう。ついつい見入ってしまうような味わい深さのある映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/出演(声)/音楽/撮影/編集 堀貴秀
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