★★★★☆
あらすじ
妻が妊娠したことで、その連れ子との関係がうまくいかなくなり、苦悩する男。
感想
残業せず、飲みの誘いも断って、家族と過ごす事を大切にしてきた男。なのにそんな家族の一人から嫌われてしまうのはつらい。しかも、自分がさんざん悩んだ事に関して責められて。
それも、母親と継父の間に子供が生まれることで連れ子の自分は邪魔者扱いされるのではないかという本能的な恐れに、思春期の面倒臭さが混じり合った、年頃の娘の甘えというか、拗らせでしかないのだが。言いたいことをグッとこらえて、何とかコミュニケーションを取ろうとする主人公の心情を思うと胸が痛くなる。
そして家族の件だけでなく、仕事上でもつらい状況に置かれることになり、人生の先行きが見えてきた40代の男の悲哀がひしひしと伝わってくる。敢えて多くを語らず、淡々としているところがまたリアルだ。人生ってこんなに苦しいのかと辛くなるような重苦しい雰囲気。
そんな中で、娘の実の父親を演じる宮藤官九郎が面白かった。夜泣きする子供にイラつき妻子に暴力を振るい、今は酒やギャンブルに溺れ、実の子と会うのにお金を請求するようなとんでもない人でなし。全然、笑えないはずなのだが、クドカンがいかにもな悪い顔をしているのでつい笑ってしまう。そして最後は親心も見せたりして、なんだかずるい。
子供が生まれることですべてが有耶無耶になって、何となくハッピーエンドっぽく終わる映画はあまり好きではないのだが、この映画は主人公が逃げずにちゃんと家族の問題に向き合い、乗り越えようとした末のエンディング。タイトル的にもピッタリなので納得感はある。
親子の関係がメインで、あまり夫婦の関係は描かれないのだが、ストレス発散のためにカラオケで歌う曲が二人とも一緒、というのが良かった。それだけでいろいろ伝わってくる。
スタッフ/キャスト
監督 三島有紀子
脚本 荒井晴彦
出演
田中麗奈/南沙良/鎌田らい樹/新井美羽/水澤紳吾/池田成志/宮藤官九郎/寺島しのぶ