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「悲しみよこんにちは」 1954

悲しみよ こんにちは (新潮文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 父親とその若い愛人と共に避暑地の別荘にやって来た年頃の少女。そこに死んだ母親の友人がやって来て、別荘での暮らしに変化が訪れる。

 

感想

 若い頃は何にも囚われず、自由気ままに生きたいと無邪気に思うものだが、でも心のどこかで、そうはいかないだろうな、とも思っている。だが、この若い主人公には実際にそうやって生きている父親が目の前にいる。半分玄人の若い女をとっかえひっかえし、夜通し仲間と飲んで騒ぐ日々を過ごしている。そんな暮らしを目の当たりにすれば、自分もそんな風に過ごしたい、そうなるだろうと思うのも不思議じゃない。

 

 ただそれにしても父親の自由っぷりはすごい。娘を連れて夜遊びをして一緒に騒ぎ、その一部始終を見せるし、娘とのバカンスには恋人を同伴し、しかもその途中で別の新しい女性に乗り換える。ある意味羨ましい身分。どこにでもいる享楽的で刹那的に生きる人たちの一人である。それに共感して好ましく思っている主人公も凄いが。

 

 

 しかし、そんな父親も将来を考え、亡き妻の友人で、年齢も近い女性との結婚に踏み切ろうとする。自由気ままに生きてきた父娘を堅実な生活へと導こうとする、父の恋人に反発を覚えた主人公が、ある策略を思いつき...というストーリー。

 

 単純に父の恋人が憎いだけであれば、これはサスペンスやミステリーになるのだが、主人公は基本的には彼女が好きで、その考え方には共感を覚える部分もあり、その心は揺れている。懲らしめたいような懲らしめたくないような。そこに父親の幸せや自身の将来、また自分の考えた策略に対する自信や不安、様々な感情が入り混じり心が落ち着かない。この矛盾する思いが交錯して、移り気なところが「若さ」というものなのかもしれない。そこに主人公の恋も描かれ、まさに青春小説といった雰囲気だ。

 

アンヌはこちらを向いてはいたが、見つめていたのは、わたしのことばから立ちのぼった人影だった。 

 p21

 

 著者が18歳の時に出版されたというだけあって、文章も繊細で若々しさがある。ただ、物語の結末もそうだが、どこかにどうせロクな未来は待ち受けていない、みたいな投げやりな雰囲気も漂っていて、それが苦みとなっている。これは、享楽主義者にも若者にも共通する感覚なのかもしれない。

 

著者

フランソワーズ・サガン

 

悲しみよ こんにちは (新潮文庫)

悲しみよ こんにちは (新潮文庫)

 

悲しみよこんにちは - Wikipedia

 

 

登場する作品

「今ここにある生」 ポール・エリュアール

眠れる森の美女 

白雪姫 (グリム童話)

 

 

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