★★★★☆
あらすじ
少女が父親、その恋人と共に3人で過ごす避暑地に、死んだ母親の親友だった女性がやって来る。
感想
主人公のセシールを演じるジーン・セバーグがなんと言っても魅力的だ。物憂げな現在を表した白黒映像でも、輝いていた昨年の夏を表すカラー映像でも、ショートカットでファッショナブルな彼女の姿が映える。とりあえず彼女を見ているだけで全然もってしまう。
そして、恋人を盗られる若い女や新しい母親として責任を感じる女性、そしてその間を飄々とした態度で切り抜ける男と、難しい役どころの他のキャスト達も、なかなかの演技を見せている。特に男に捨てられる若い女役のミレーヌ・ドモンジョの天真爛漫さが、意外と良かった。
原作を読んだ後に見たこの映画は、ちょっと説明が足りない薄味になっているかなと思ったが、よく考えるとそれを役者陣の演技で補っているのかもしれない。彼らの視線や表情が心の動きを良く表していた。女中が頻繁に入れ替わったり、そのうちの一人が仕事中に皆の前で何度も横を向いて水を飲む仕草などは、物語の行く末を暗示しているかのようで、細かい部分までよく考えられている。これに主人公の魅力も計算していたとしたら、本当によく出来た映画だ。
主人公のショートカットが「セシルカット」として流行した映画として知られるが、個人的には浅香唯が「映画で見たセシルのように…」と歌っていたのは彼女の事か、という意味で感慨深い。
スタッフ/キャスト
監督/製作 オットー・プレミンジャー
原作
出演 デボラ・カー/デヴィッド・ニーヴン/ジーン・セバーグ/ミレーヌ・ドモンジョ/ジェフリー・ホーン/ジュリエット・グレコ
音楽 ジョルジュ・オーリック