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「大いなる陰謀」 1998

大いなる陰謀 (角川文庫 ホ 14-1)

★★★☆☆

 

あらすじ

 陰謀理論を教える大学教授の男は、シカゴの実家にいるはずの妻が、墜落したニューヨーク発ブラジル行きの飛行機に乗っていたとの連絡を受ける。

 

感想

 ドラマ版の「ファーゴ」シリーズが面白かったので、そのショーランナーである著者の小説を手に取ってみた。

www.star-ch.jp

 

 主人公は陰謀論者の男だ。妻が乗っているはずのない飛行機で墜落死したとの報を受ける。最初は、妻が不倫旅行をしていただけなのに陰謀だと思い込み、盗聴や尾行を警戒する主人公の姿を面白おかしく描くものかと思っていたのだが、どうも様相が違う。主人公やその仲間に実際に何者かが忍び寄っているらしいことが分かってくる。

 

 ただ、他の乗客も大勢一緒に死亡しているので、たとえ陰謀だったとしてもただの陰謀論者など狙うわけはないのだから、ターゲットは別の誰かなのでは?と半信半疑になってしまう。そんな状況で、これは陰謀だと確信し、真相を探ろうとする主人公らの姿が描かれていく。

 

 

 普通だったら、また陰謀論者がおかしなことを言い出したよと一笑に付すところなのだろうが、実際におかしなことが起きてしまっているのだからリアクションに困ってしまう。ほら吹きだと馬鹿にしていた人が言ったことが、すべて真実だったと判明した時のような気まずさだ。もはや陰謀論者を簡単には笑えなくなる。

 

 世の中には陰謀論者が溢れているが、彼らもきっとこんな瞬間がやって来ることを信じて頑張っているのだろう。自分だけが真実に目覚めたと思い込んでいる。気分はレッドピルを飲んだ「マトリックス」のネオなのだろう。何を言っても間違っているのはそっちの方だと譲らない。彼らを止めることがいかに難しいかを実感する。

 

 98年の小説なのであまりインターネットの話は出てこないが、陰謀論者のリーダーがネットの活用を訴える若手を見て、情報力が国家から民衆の手に渡るのはいいことだ、と語っていたのが印象的だ。ネットの普及によって世の中がより民主的になると夢見ていた頃の牧歌的な話だ。

 

 それから30年ほど経った現在では、ネットは大衆よりも権力側にとって都合の良いツールだったことが判明してきたような気がする。ちょっとお金を使えば簡単に大衆を騙して操れてしまう。しかも今まで声が届きにくかった層が一番敏感に反応し、簡単に騙されてくれる。

 

 制約ばかりで使えないテレビより、やりたい放題できるネットの方が情報操作しやすい。だからネットでいくら問題が起きようが、なかなか規制が設けられることはなく、野放しのままにされているのだろう。

 

 陰謀論者である主人公らの想像通りにどんどんと進行していく展開で、呆気に取られているうちに、あれよあれよと結末を迎えてしまった。終盤に明るみになった妻に関する新事実は都合が良すぎる感もあり、全体的に現実離れしたフワフワとした雰囲気が漂っている。この浮遊感を面白がれるかどうかがカギになりそうだ。

 

 最後まで自分の信念を捨てない主人公の姿には胸を打たれる。最後はきっちりと引き締め、幕が閉じられた。

 

著者

ノア・ホーリー

 

 

 

登場する作品

「海まで漕いで(Paddle-to-the-Sea)」

「お化けの料金所(The Phantom Tollbooth (Essential Modern Classics))」

ターザンの帰還 (創元SF文庫 ハ 3-44)

「バスケットボール日記(The Basketball Diaries: The Classic About Growing Up Hip on New York's Mean Streets)」

 

 

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