★★★☆☆
あらすじ
別荘仲間の大学教授夫人を狙う男は、知り合いの女性からある企みを持ちかけられる。
感想
叔母のいる別荘に時おり滞在しに来るカメラマンの男。夫が海外赴任中で、別荘でひとりで暮らす大学教授夫人を狙うくらいだから良い奴ではないのは確かだが、かといってとんでもない悪人というわけでもなく、女好きのプレイボーイでけしからん奴というくらいの評価が適当だろう。しかし彼の夫人への迫り方は、今だと普通にストーカーだ。勝手に家の敷地に侵入したり、盗撮したり、家の外でじっと待ち伏せしていたり。でもこうでもしないと、劇的で一発逆転な恋愛を描くのは難しいような気もする。今だとどう描くと劇的な恋愛に見えるのだろう。もしかしたら現実世界でも劇的な恋愛は減っているのかもしれないとふと思ったりもした。
そんな男にある企みを持ちかける知り合いの有閑未亡人。自分をかつて襲った男に復讐するために、彼と婚約した若い女を手籠めにして欲しいというもの。復讐のために相手ではなく相手の関係者を苦しめようという発想はなかなか悪どい。ただ彼女も元々は襲われてしまっているわけなので、つけ入る隙のないほどの極悪人という感じはしない。嫌な性格をしているとは思うが。
そしてこれに未亡人の愛人が加わって五角関係が繰り広げられ、やがては悲劇な結末を迎える。だが誰かがそれを操っていたとか、支配していたとかいうわけではなく、偶然が偶然をよんでそうなっただけという印象で、映画冒頭から言及していたような企みはあまり関係ないような気がしてしまった。強いて言うなら、未亡人が自作自演して自滅しただけ。悪だくみを考えたが、その結果手中にあるはずの男たちが皆別の女に夢中になってしまってなんだか嫉妬しちゃった、という話。どうせ悪人を描くなら、とんでもない悪人を描いて欲しかった。
あと、物語とは全く関係ないが、映画に登場するこの時代の車たちがどれもなんだかおもちゃみたいで可愛らしい。優しい色合いの緑とか茶といったカラーリングも良くて、眺めているだけでも興味深かった。
スタッフ/キャスト
監督 藤田敏八
脚本 新藤兼人
原作
出演 宇津宮雅代/三浦洋一/片桐夕子/野平ゆき/風戸佑介/南美江