★★★★☆
あらすじ
勤め先のオーナーと関係を持ってしまった既婚の女は、身ごもったことを知る。
感想
主人公が夫とオーナー、どちらが父親か分からない子供を身ごもってしまった事がすべての始まり。ただ誰が悪いとも言い切れないのが、なんとも言えないところ。主人公とオーナーが関係を持ってしまったのも、主人公が勘違いしてしまっただけだし、オーナーもその勘違いに勘違いしてしまっただけ。事故みたいなものだった。ただ訴えられたらオーナーが悪いという事になってしまいそうだが。でもオーナーが本当に悪い人間であれば、自分の店で働く女性たちを何人も手籠めにしているはずだ。
そしていくら事故みたいなものだったとはいえ、主人公の夫やオーナーの妻がそれに素直に納得して簡単に受け入れる事はできないというのもよく理解できる。しかし、金持ちのオーナーに対して怯まず交渉する若い主人公の夫も大したものだ。そして、その交渉に素直に応じ、かなりの譲歩までしてしまうオーナーの男はやはり悪い人間ではないな、と思ってしまった。
生まれてきた子の処遇について、金銭のやり取りを含む交渉をまとめ上げた夫に対して、嫌悪感を感じてしまう主人公。あの事故みたいなことがなければ、きっと貧しいながらも仲の良い夫婦のままでいられたのにと思うと、やるせない。そして、生まれてきた赤ちゃんにメロメロになるオーナーに、捨てられるのではと危機感を感じる妻。こちらも夫婦仲は最高でないにしても割り切って維持してきた良好な関係が壊れてしまった。育んできた愛情や関係よりも、金銭を優先させてしまった結果と言える。
何が大事かを見失ってしまった男女の群像劇。ラストはそこで終わるのかと少し呆気にとられたが、深く余韻の残る映画となっている。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 リー・ユー
出演 ファン・ビンビン/トン・ダーウェイ/レオン・カーフェイ/エレイン・ジン