★★★★☆
あらすじ
恋人が行方知らずとなり失意の中にいた女の前に、恋人そっくりの男が現れる。
感想
主演二人のプライベートな話題のおかげで別の意味で有名になってしまった作品。序盤の二人のこっちが見ていられないようなイチャつき具合を見ていたら、映画の中でずっとこんな事をしてたらそりゃプライベートでも余裕でつき合えちゃうよな、なんて思っていたのだが、二人がイチャイチャするのはこの序盤だけだった。男はある日突然いなくなり、落ち込む女の前に東出昌大が演じるもう一人の人物、元恋人そっくりの男が現れて、普通の男女の恋愛に発展していく。
元恋人がふらっと出かけてそのまま帰って来ないような、どこか浮世離れした男だったのに対して、顔がそっくりの新恋人はとても誠実な人間で、観ているだけでも本当にいい奴だなと感心してしまうくらいだった。諍いが起きれば仲裁し、困っている人がいれば声をかけ、人の言葉に真摯に耳を傾けようとする。地に足がついたしっかりした男という印象だ。東日本大震災などの描写も交えつつ、長い月日の二人の付き合いが描かれていく。そんな中で最初は険悪だった二人の友人同士が、特に何の説明もなく当然のように結婚しているのは上手い描写だ。わざわざ描かなくてもなんかわかる。
そんな二人の前に元恋人が突然現れた事により、物語は急展開を迎える。そしてこの後の展開は予想を裏切るものばかりで、驚きの連続だった。ただ、タイトルが「寝ても覚めても」で、元恋人の名前は夢を食べるという動物と同じ「バク」、女の名前は「朝」子という事から考えると、朝方、ベッドの中でこれは夢か現実かとぼんやりしている女、みたいなイメージが浮かんでくる。ぼんやりしていた彼女は、夢の世界の住人のような元恋人との恋愛よりも、地に足ついた今の恋人との恋愛が現実的だと理解したのだろう。それとは逆の事を夜の車の中で女が元恋人に語っているのが面白いが、朝になってそれはやっぱり違うと気づいた。二度寝してしまって気持ちいい夢を見ていたが、マズい、と慌てて飛び起きたという感じだろうか。
はたから見ていれば厚顔無恥なひどい女と、優しいだけの情けない男という事になるのかもしれないが、本人たちからしたらそんなことは分かっているがそれでも好きなのだからどうしようもない、という事なのだろう。二人の付き合いには汚点が加わり、もう清く正しいものではなくなったかもしれないが、それでもその関係が続くことは「きれい」な事なのかもしれない。
それから映画の世界観とリンクするようなtofubeatsの主題歌「RIVER」が良かった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 濱口竜介
出演 東出昌大/唐田えりか/瀬戸康史/山下リオ/伊藤沙莉/渡辺大知/仲本工事/田中美佐子
音楽 tofubeats