★☆☆☆☆
あらすじ
女児を誘拐し脅迫電話をかけるも、すでにその子は死んでいると告げられ、困惑する男女。77分。
感想
死んでいるはずの女児を誘拐してしまった男女に起きる物語。ジャンルで言えばホラー映画になるのだろうが、色々な要素が混じってしまっておかしなことになっている。まず誘拐事件に関しては、親がその子はもう死んでいると身代金を払うことを拒否しているのだから、いつまでも子供を手元に残しておこうとする意味が分からない。これではただの子守だ。
しかも今夜中に大金が必要なのだから、この件はあきらめて至急別の金策を考えるべきだろう。それなのに、すぐにいなくなってしまう女児を探して何度も学校内をウロウロし続ける。のんきか、とさすがにツッコミを入れたくなった。
この誘拐の拠点になっている学校は廃校になった小学校なのだが、夜になると主電源を入れ、校内の照明を点けてしまっている。これでは周辺の住民に怪しまれてしまうはずで危険だろう。こんな風に玉山鉄二演じる主人公は意味不明な行動ばかりしている。そのくせ、いつも無駄に落ち着いているので、ただの自意識の高い自信過剰のバカに見えてくる。これはコントなのかと疑ってしまうレベルだ。水川あさみ演じる恋人に詰め寄り、一本調子の真顔で脅すシーンが何度かあるのだが、あまりにシュールで笑ってしまいそうになってしまった。
やがてなぜか主人公の仲間がやってきて内輪もめが始まる。メインはホラーということで、それまで学校の怪談的な超常現象が描かれ続けていたのに、それを無視する形になってしまう展開だ。なんなら途中で仲間のひとりが怪奇現象によって死んでしまったのに、それすらあまり気にする素振りはなかった。
怪奇現象に見せかけるトリックを使ったサスペンスならまだしも、ガチのホラーと仲間同士の戦いの同時進行はいくらなんでも無理がある。たとえ対立するにしても、ホラー現象に対する見解の相違が原因であるべきだろう。慎重に行くべきか、大胆に行くべきかで揉めて分裂するならまだ理解できた。とにかく、ホラーな出来事に皆が全集中してくれず、別件で喧嘩を始めてしまうので趣旨がブレブレだ。身内争いの片手間にホラー対応されたら、トイレの花子さんだって困惑してしまうだろう。
その後も主人公が責任を感じて自首すると決意したくせに、なぜか女児を始末しようとしたりと支離滅裂な行動が続く。いちいちツッコミを入れていたらきりがないほどだ。とにかくどこかで見たことのある面白いエピソードを、脳みそを一ミリも働かさずに詰め込んでしまったような映画だ。その場でアドリブで考えたとしてもこんな酷いストーリーにはならないだろう。酷すぎて全然怖くないが、強いて言うなら大の大人が大勢集まって、こんな映画を作ってしまった事が怖い。これこそが最大のホラーだ。
スタッフ/キャスト
監督 佐藤祐市
出演 玉山鉄二/水川あさみ/篠田光亮/小林且弥/豊永利行/朝倉えりか/森迫永依/宮田早苗/小日向文世
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