★★★☆☆
あらすじ
死んだとされていたホームズがワトソンの前に現れる「空き家の冒険」など、全13編の短編を収録。
別邦題に「シャーロック・ホームズの帰還」「シャーロック・ホームズの復活」など。
感想
死んだはずのホームズが戻ってくるところから始まる短編集だ。死に方がミステリアスだっただけに、実は生きていたと言われてもちゃんと納得できる余地が残っていた。何もかもをはっきりと言わない、ある意味で文学的な表現を使っていたことが功を奏したと言えそうだ。
今回の作品の中では「恐喝王ミルヴァートン」が面白かった。いつも余裕で客を迎えるホームズが敵に乗り込まれてたじたじとなり、その後はいつもと逆の立場、まるで犯罪者のような行動を取る。まったく謎解きは関係なくなっていたが、偶然事件を目撃したことでちゃんと一つの物語に仕上がっていた。
ただ今回の短編には、前に似たような状況や展開があったなと思ってしまう場面がいくつかあり、マンネリを感じるようにもなってきた。これはシリーズが続けば仕方がない部分ではある。
また、怪力といえば船乗り、というある意味でステレオタイプな決めつけが何か所かで見られたのはちょっと面白かった。だが実際のところ、都会の一定の階級以上の人たちは、体を使った仕事をしている労働者たちよりも断然体力が劣っていたのだろう。
スポーツのアマチュアリズムは、一緒にやったら貴族が肉体労働者にことごとく負けてしまって面白くないので、彼らを除外し、働かない自分たち(アマチュア)で楽しむための方便だったと聞いたことがある。
最後は再びホームズが退場したことを伝える作品で締めくくられる。今度は劇的ではない穏やかな去り方で、著者が読者を刺激しないようにとめちゃくちゃ気を使っていることが伝わってくる。熱狂的なファンは時に恐い。しかし、やりたくないけどやれば大金が手に入るなんて、相当なジレンマだったのだろうなと同情する。だがこれが最後でもいいかなと思える粋な結末だった。
収録作品
空き家の冒険
ノーウッドの建築業者
踊る人形
美しき自転車乗り
プライアリ・スクール
ブラック・ピーター
恐喝王ミルヴァートン
六つのナポレオン像
三人の学生
金縁の鼻眼鏡
スリー・クォーターの失踪
アビィ屋敷
第二のしみ
著者
アーサー・コナン・ドイル
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