★★★☆☆
あらすじ
若い女の家で居候をすることになったカメラマンの男。やがて一組のカップルも引っ越してきて男女4人の共同生活が始まる。
感想
おそらく福生市の米軍ハウスが舞台となっている。当時流行に敏感な若者が好んで移り住んだと言われているが、今見ると荒んだ感じがしてあまり住みたいとは思えない。ただ元々、大勢の人が暮らせるように広い土地に突貫で大量に建てたのだろうから、当たり前か。家賃が安かったようだから、アメリカ文化に憧れるあまりお金のない若者にとっては手軽にアメリカを感じられて良かったのだろう。
そんな米軍ハウスで暮らす女の元に転がり込んだ売れないカメラマンの男が主人公だ。二人が暮らし始めるきっかけが、主人公が仕事で一度会ったことのある彼女の家に押し掛け、そのまま手籠めにしてしまったという、強引というか犯罪的な出来事だったのがすごい。
とはいえ、この手のものの物語ではわりとよくあるパターンではある。でもこれを真に受けて、現実世界でも同じ感覚で過ごしている男が今だにたくさんいるから恐ろしい。男女の関係には双方の合意が必要、みたいな至極当然な話が出ると、なぜか鼻で笑って猛反発したりする。
それから、皆が彼女の家をノックすらせず、いきなりドアを開けて入って来るのが気になった。家主も鍵をかけていないので、どういう感覚?と思ってしまった。当時の日本人の防犯意識や他者との距離感がそんなものだったのか、彼らがアメリカンな気分にかぶれていたせいなのか、どっちなのだろう。
やがて主人公らの家に一組のカップルが加わり、男女4人の共同生活が始まる。セリフが聞き取りづらく、状況もあまり説明されないので、正直ストーリーはあまりよく分からなかった。上手くいかない人生に落ち込みつつも、プライドが邪魔して強がってしまう主人公が皆をかき回す物語、といったところだろうか。時々意外性のある展開が起きるのは悪くなかった。
そして共同生活ではありがちな入り組んだ男女問題が発生する展開になっていく。桃井かおり演じるヒロインが自棄になった主人公のツケを払わされるクライマックスは、なんともいえない物悲しさがあった。こうして彼らの共同生活は空中分解し、一つの時代の終わりを迎えた、となっていくのかと思ったら、4人がより仲良くなっていて呆気に取られてしまった。なんだよ、若いって素晴らしいかよ、と言いたくなった。これはヒッピー文化の影響なのだろうか。あの時感じた物悲しさを返してくれよと思わなくはないが、これはこれでありだ。
スタッフ/キャスト
監督 藤田敏八
脚本 大和屋竺
出演 高橋長英/桃井かおり/伊佐山ひろ子/川村真樹/山谷初男
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