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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ザ・レイプ 」 1982

ザ・レイプ [DVD]

★★★★☆

 

あらすじ

 帰宅途中に暴行されてしまった女性は、加害者を刑事告訴し裁判を行う決意をする。 

 

感想

 オブラートに包まないド直球のタイトル。これだといわゆる成人向け映画なのかと勘違いしてしまいそうだが、暴行被害に遭った女性が立ち直っていく姿を描いたシリアスな物語。しかし当時、老若男女が映画館窓口で「ザ・レイプ。大人2枚。」とか言いながらチケットを買っていたのかと想像すると昭和すごいな、と胸が熱くなる。今でも変なタイトルの映画がないわけではないが。

 

 まず主人公への暴行事件が、恋人と過ごした後に起きるというのが、その落差の大きさを見せつけられて辛い。そのあとすぐに警察を呼んだり事情聴取される気になんてなれない事がよく理解できる。そして、あんなにはつらつとしていた主人公が事件直後は聞き取れないくらいの小声となって人を寄せ付けない空気を出し、さらにその翌日になると今度は打って変わって不安で色んな人に電話をかける姿は、彼女の心情をよく表現しているように感じられた。事件に動じていなかったのではなく、ショックで感情が停止していたのだ。

 

 

 そんな彼女に対する風間杜夫演じる恋人のリアクションが色々おかしいのがとても気になった。自分の部屋から帰った恋人の様子がおかしいからと心配になり、そのまま彼女の部屋に向かうくらいなので、普通に思いやりのある人間なのだろうとは思うだが、彼女の身に起きた事を知っても思いのほか淡白だったのが驚いた。通報するか確認もしないし、病院に行くかとも尋ねない。犯人が分かっているのに、犯人に対する憤りなどの感情もゼロで、ただただ事故にでもあったと思って忘れろというばかり。そして事件の翌日には本当に事故にあっただけとでもいうように、普通に彼女と接しようとする姿は、コイツ鬼かと思ってしまった。ひどい。

 

 その後、恋人以外にも事実を知った人たちの彼女への接し方が描かれていくのだが、色々と見ているうちに段々と何が正解なのか分からなくなってきている自分がいた。彼女を思いやった上での言動だったとしても、本人にどう響くのかは分からないから難しい。

 

 そして、泣き寝入りせず警察に届け出て裁判をすることにした主人公。予想どおり裁判では辛い思いをすることになる。彼女に執拗に不快な質問を浴びせかける弁護士役の人が、妙にリアルで嫌な感じだったが、この人は本物の弁護士らしい。

 

 この裁判は、加害者がどう弁明すればいいのかの参考になってしまいそうな内容でどうなのだろうかと思わなくもないが、実際の裁判でもこういう嫌な光景が日常的に見られるという事なのだろう。被害にあった上にさらに自分の過去までほじくり返され、あることないこと言われるのはたまらない。まさにセカンドレイプだ。

 

 裁判の様子を描きながらも、途中から主人公がこの事件を乗り越えていく姿を描くことに物語の重心が移っていく。映画が重苦しくなりすぎるのを避けたともいえるし、事件を軽く扱い過ぎだと非難することも出来て、ここは評価は分かれそうだ。個人的には、裁判の結果を敢えて見せない事から考えても、この映画を観てもあまり女性が勇気づけられることはないような気がしてしまった。

 

 ただこの主人公を演じた田中裕子の演技は素晴らしかった。特に最後の、恋人が彼なりの総括の言葉を述べた後、何か言いたげながらもグッと飲み込んだ後の表情が良かった。言ったところでどうせわかってもらえないんだろうなという諦念と、だとしてもそれにとらわれることなく自分は自分らしく生きていく、という決意のようなものが感じられた。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 東陽一

 

原作 ザ・レイプ

 

出演 田中裕子/風間杜夫/伊藤敏八/後藤孝典/長谷川初範/加賀まりこ/渚まゆみ

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音楽 田中未知

 

ザ・レイプ (1982年の映画) - Wikipedia

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