★★★☆☆
あらすじ
漁船で海上生活を送る老人と少女は、数か月後に結婚することになっている。
感想
海上に停泊した漁船に、釣り客をボートで送迎をして生計を立てる老人と少女。少女は船から一切降りないという独特な生活だが、韓国ではわりと良くあるスタイルなのだろうか。
しかし、少女にちょっかいを出す釣り客たちを、老人が弓矢で脅すとはなかなか過激だ。警察沙汰になって一瞬で終わりそうなものだが、まあそこは映画なので。 少女と老人の不思議な関係が描かれていく。この二人は、映画の中で一切言葉を発しないのに、それでも絆のようなものが表現されているのはすごい。
それにしても、老人が少女が17歳の誕生日を迎える日まで結婚を待つ、というのは真面目というか健気というか。基本的に誰もいない海の上なのだから、好きにすればいいのに、と思ってしまった。一日終わるごとに毎晩カレンダーに印をつけて、結婚までの日々をカウントダウンする老人の姿がいじましい。
そんな結婚までの日にちを数える日々の中で、釣り客として訪れた青年の一人に少女が恋をしてしまったことで、少女と老人の関係に亀裂が入ってしまう。しかし、少女が幼い頃に行方不明になった女児だったとは意外。大勢の釣り客に不審がられていたのだからすぐに気付かれそうなものだが、皆にとってはしょせん他人事だったということか。
そんな少女と結婚しようとしている老人に対して、無垢な少女を汚い欲望の対象にするな、と非難していた青年が、自身も少女に手を出そうとしたのは驚いた。老人は駄目だが若者はいいということか。互いに気があるからという言い訳が出来るかもしれないが、でもそれは老人と少女の間にもあったとはいえる。
さらには青年が少女を船から連れ去ろうとやって来たのに、乗って来たボートをすぐに返してしまったのも謎だった。普通はすぐに少女をボートに乗せて引き返すだろう。なぜか居残り、その後をすべて見守ることに。
そしてクライマックス。老人が空へ矢を放ち、それが甲板に突き刺さる。監督はきっとこのシーンをやりたくて映画を撮ったのだな、と察してしまうような象徴的なシーンだった。そう考えると、このシーンへ導くための逆算としては悪くなかった。
幻想的でどこかおとぎ話のような物語。ハン・ヨルムがそんな物語に登場しそうな不思議な少女を魅力的に演じていた。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/編集 キム・ギドク
製作総指揮 鈴木径男/池田史昭
出演 チョン・ソンファン/ハン・ヨルム/ソ・ジソク/チョン・ゴクファン