★★★★☆
あらすじ
就活対策のために集まった男女が、それぞれの思いを抱えながら、内定を得るために奮闘する。直木賞受賞作。
感想
なかなか心に痛い小説だった。内定を得るよりも断られることの方が多いという、人生でほとんど経験することのない経験をしながらも、それでもそう簡単に止めることはできない就活。なかなか内定を得られない自分に悩み、同様にスタートした仲間の動向も気になり、内定を得たと聞けば嫉妬もする。
そんな状況の中でも、自分は人とは違う特別な存在だと思うことで、なんとか自分を保とうとする。今どきらしくツイッターなんかで、それをアピールして。
なんか、思ってたことが全部出ちゃった。私ってこんなに子どもだったのかな
p.257(文庫)
この小説に登場する人物たちは、なかなか自分の本音を言わない。就活を批判しながら就活する男や学生なのに名刺を作って配る女を笑いながら、何事もないように付き合っている。ある意味偉い。普通は距離取ったりしそうなものだ。だが、もうちょっと本音を言い合っても良いような気がする。SNSなんかで吐き出さないで。
就活に真正面から取り組む物語というのは、なかなか無いような気がするが、著者がちゃんと就活しているのが生きているのだろう。著者は、若くして作家デビューした事による利点を、ちゃんと利用出来ているような気がする。
妙なプライドや虚栄心を捨て去って素の自分を知ることが必要とか、就活は何かの宗教儀式のようなものにすら見えてしまう。なんでそこまでしなきゃいけないの、と思ってしまうが、そうすることに決めた以上はやるしかない、ということなのだろう。就活を控えた人には、心構えとして読んでおくと良さそうな作品だ。
著者
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