★★★☆☆
内容
人びとが幸せな人生を送るために必要なのは、IQの高さではなく、心の知能指数であるEQである。
感想
社会に出て数年も過ごせば、世の中でうまいことやるために必要なのはどうやら勉強が出来るとか仕事ができるということじゃないな、ということに気付きはじめる。上司や同僚、得意先との関係を良好に保てる人間が重宝がられている。つまり、相手の感情を理解し、気分を損ねないように自分の意思を伝えられる人、そのためにも自分の感情をうまくコントロールできる人であることが必須である。
これに気付けた人、素でこれが出来る人が伸び伸びと人生を謳歌できる。今現在そんな人生を過ごせていない人にも救いがあるのは、本人の努力次第でそんなこころの知能指数をあげていくことが出来るということだ。本書ではこころの知能指数とは何か、その科学的根拠、そしてその能力を上げていく方法が紹介されている。
そして獲得したEQをどのように活用していくのか、その応用の方法も紹介されている。応用編として一番最初に取り上げられているのが夫婦間に生じる問題、というのが、つい苦笑してしまう。でも確かに多くの時間を共に過ごすことになるし、良好な関係を保つことで心の平安を得ることが出来るわけだから重要だ。夫婦間の問題について、男は話し合いをすると自分の感情が高ぶり、冷静に対応できなくなることがわかっているからそれを避けようとし、女はたとえ具体的な解決策を得られないとしても、情緒的なつながりを得るために話し合おうとする。男女ともに良好な関係を維持するための行動をとっているのに、互いを怒らす結果になっているというのが興味深い。
応用編としてはその他に、職場や医療の現場が取り上げられている。その後は人間の最もEQが発達する子供の時期の教育への活用事例が紹介されており、教育現場で働く人や子育てをしている親にとっては有用かもしれない。
確かに学校で学力を身につけさせるのと同様に、子供達にEQを身につけさせる教育をすれば社会は良くなっていくだろうと想像はできるが、なかなか難しそうではある。そんな教育をするためには教師が高いEQを身につけていなければならないが、そんな教師に出会ったことがない。なのでまずは教師の教育が必要で、その教師を誰が教育するのか、という事にもなる。これらがうまく回りだすまでが大変そうだ。
この本がベストセラーになったのは20年ほど前だが、その時に読んでいたらもうちょっと自分の人生は違っていたのかな、と少し物思いにふけってしまった。
著者
ダニエル・ゴールマン
登場する作品
The Bell Curve: Intelligence and Class Structure in American Life (A Free Press Paperbacks Book)
Frames of Mind: The Theory of Multiple Intelligences
Call it Sleep (Penguin Modern Classics)
わかりあえる理由(わけ) わかりあえない理由(わけ)―男と女が傷つけあわないための口のきき方8章 (講談社プラスアルファ文庫)
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