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「星を継ぐもの」 1977

星を継ぐもの (創元SF文庫) 

★★★☆☆

 

あらすじ

 5万年前の人間の遺骸が月で発見され、科学者たちはその謎を追う。「巨人たちの星シリーズ」第一作。

 

感想

 宇宙を舞台にした冒険物語かと思っていたが、実際はほとんど地球上で物語が展開されている。月で発見された人類の遺骸の謎について、地球での分析結果や、また月や別の星からの新情報を元に科学者たちが検証し、仮説を立てていく。

 

 この情報が各地から少しずつ挙がってくるというのが物語を面白くしている。それまでの情報を元に科学者たちは仮説を立て議論しているが、新たな情報がでてくることにより仮説が覆されたり補強されたりして、それぞれの立場が強くなったり弱くなったりと揺れる。読んでいるとどれかの仮説に肩入れしたり、疑問を呈したり、別の説に寝返ったりと忙しい。

 

 

 情報が増え、少しずつ真相に近づいている実感はあるのだが、どの説にも辻褄が合わない何らかの欠陥があり、どこかすっきりしない状況が続く。ちなみに読み終わった後に少し調べてみると、この小説で語られている月の表と裏で様相が違う事や、月の起源や人類進化の謎などは、科学界で議論になっている実際の話だそうだ。

 

ハントはもう一度尾根をふり仰いだ。彼の意識の片隅ではっきりと捉えることのできない何かが差し招くように疼いていた。何やら識閾下の影がしきりに認知を求めて足掻いているかのようでもあった。しかし、それはほんの一瞬のことだった。

p229

 

 全ての辻褄が合う解釈が登場する期待感にワクワクさせられる。そして、ついにすべての謎が明らかになる一つの物語が導き出されたわけだが、月の説明の中でそんなの有りなの?と思う部分があって、少し引っかかってしまった。宇宙の謎は全て解明されているわけではないので、無いこともないのだろうがあの説明にリアリティはどれくらいあるのだろうか。導き出された物語自体はロマンあふれるストーリーだったが、これのせいでいまいち盛り上がれなかった。

 

著者

ジェイムズ・P・ホーガン 

 

星を継ぐもの - Wikipedia

 

 

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