★★★☆☆
内容
ロンドンビジネススクールの二人の教授による、新しい時代の新しい生き方の解説。
感想
人類の平均寿命が伸び、100歳を超える人も珍しくなくなってきた。先進国で今生まれる子供は、50%の確率で105歳以上まで生きるという。このような時代では、これまでの学生、会社員、老後という3つのステージの人生を送ることは難しくなる。
本書の中では、具体的に現役時代にどれぐらい貯金すれば老後は安泰かを試算してみせるのだが、読んでいると段々と気分が重くなってくる。老後をのんびり過ごすことなんて出来ず、働き続けるしかないようだ。早死にするのも嫌だが、長生きするのも嫌だと言うのはずいぶん勝手だが、そんな気分になってしまう。まぁ単純に、自分の将来について冷静に客観的に考えると、明るい気分にはなれないのかもしれない。普段、何も考えずに何となく生きているだけ、という証拠でもある。
本書では寿命が伸び、働く期間が長くなるこれからの時代、これまで通り一つの会社を勤め上げて引退、とはならないだろうと予測する。若い頃に身につけた仕事上の知識はやがて古く通用しなくなるし、もしかしたら文明の発達とともにその職業自体がなくなっているかもしれない。そうなると、一度働くことをやめて、新しい知識や新たな職につくために、自己投資する期間が必要となってくる。また可能性を広げるための様々な取り組みをすることもあるかもしれない。
「生活のためだから」と割り切って仕事をするには人生は長くなりすぎて、本当にやりたい仕事を見つけるために、人々は自分探しのような期間をより長くとるようになるかもしれない。最近よく言われる「若者の○○ばなれ」という事象も、若者の無気力なんてものではなく、自分に最適な生き方を見つけるまでは徹底して金銭的な負担を減らすという、新しい時代の生き方の知恵なのかもしれない、という指摘はなるほどな、と頷かされた。
きっとこの本で紹介されるような生き方は、ある日突然始まるのではなく、気がつけばそうなっていた、というようなものなのだろう。だから今の暮らしに安心していないで、常に自分の状況やまわりの動きを注意深く観察しておくことが必要になってくる。いつの間にか自分だけ取り残されてしまったり、先走りすぎて社会から浮いてしまうことがあるかもしれない。
高齢化社会を迎えつつある日本は恐らく、この新しい100年時代の世界の先行事例となるだろうが、真似しちゃ駄目な例としてではなく、参考にするべき例として出来れば参考にするべき例として注目されるようになってほしいものだ。直感的にそれは多分無理、と直感的に思ってしまうのだが。
著者
リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット
登場する作品
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
ケインズ 説得論集 「孫の世代の経済的可能性」
An Economic Analysis of the Family (Geary lectures)
Women and Love: A Cultural Revolution in Progress