★★★★☆
内容
古典「義経記」を町田康が語り直す。「千年の流転」では、義経の生い立ちから、決起した兄頼朝のもとに駆けつける直前までが描かれる。全4巻の予定。
感想
古典を敬遠してしまうのは、何よりもまずその読解が困難な古文が原因だ。それはとりあえず現代語訳バージョンを読むことで解決できる。次につまずくのは、当時の人々との感覚の乖離だ。いまとは全く生活レベルが違う数百年も前の人達の言動が上手く理解できない。
そんな古文に立ちはだかる大きな壁をあっさりと取っ払ってくれて、面白い、と思わせてくれるから町田康は凄い。ただあらすじを伝えるのではなく、ちゃんと楽しませてくれる。
っていうか、いろんなマイルドなもので擬装されてわかんなくなってるけど私から見ればそれはいまも変わらない。っていうか、擬装されてわかんない分、今のほうがやばいかも知れない。謀略がいよよ激しいのかも知れない。知らない間に精神的に殺されてゾンビみたいになってる。奴隷にされているのに気がつかないで自分は勝ち組だと思ってる。おほほ、いい時代だね。
p92
この「面白い」と思わせるのは、単純に現代風の言葉にするだけでは駄目で、当時の人の感覚を上記のように現代の人にわかるように丁寧に説明しているのが、実は結構重要な部分のような気がしている。
ゾンビとか持ち出して自由すぎる気もするが、元々この「義経記」は物語として楽しまれていたということなので、こういう風に楽しませつつ物語を進めるのは間違っていなくてむしろ正しい、という巻末の解説にはなるほど、と納得した。今なら何かあるとツイッターで呟くけど、そんな感じで昔の人は歌を詠んでいたんだよ、と言われると確かに親近感が湧いて物語を楽しめる。
今は単行本で2巻目が出ているが、全巻揃ってから一気に読みたかったなと思わせてくれる内容になっている。続きが気になってしまう。
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