★★★☆☆
あらすじ
日清・日露戦争後の上海。恩師の謎の死をきっかけに日本の道場から嫌がらせを受けるようになった武道館で、怒りを募らせる弟子。
感想
敵役が日本人という事で日本人的には少し心に引っ掛かりを覚えながら見なければいけない映画。今ならたとえ日本人が敵役でも全ての日本人が悪いわけじゃないという巧妙な設定にすることが多いが、この映画ではシンプルに悪い日本人しか登場しない。
この映画の中でもブルース・リーは圧倒的に強い。いきなり相手道場に乗り込みほぼ全員を倒してしまう。しかし何となくヒーローというよりはただの怒りに震える暴れん坊といった方がいいかもしれない。武術は敵を倒すためではなく自己鍛錬のため、という師匠の教えを全然守らない。
さらにほとぼりが冷めるまで上海をいったん離れろと何度も言われたのに、全然離れない。ちょっとこれはストレスを感じた。普通の映画ならいったん離れて、人里離れた場所で特訓をしてすごい技とか身に付けそうなものなのだが。
まぁ、すでに相手をほぼ全員倒すくらいなので、そんなことをする必要はないといえばない。本当ならばその勢いのまま、一気にボスも倒してしまえばいいのだが、それだと映画は30分で終わってしまう。というわけで、物語は映画的な上映時間を維持するために、クライマックスまでの間を埋めるための余興が行われる。
和服の女性のストリップショーやら白人武闘家の怪力ショー。ブルース・リーも変装してコミカルな演技をしたり、キスシーンをしたりと楽しんでいる。ただ、その間に三人も人を殺して吊し上げたりしているので、サイコパスの殺人鬼感が出てしまっているが。
そんな中で主人公の道場に忍び込んでいたスパイが腹巻をしている事で日本人だとバレるシーンがあるのだが、そうか腹巻は日本人しかしないのかと意外な気がしてしまった。というか今ではほとんど日本人もしないが。腹巻きの起源は昭和初期とかみたいだが、とすると腹巻は日本の伝統文化のような気がしていたが、実際は長い日本の歴史のほんの一時期だけ使用されたものという扱いになるのかもしれないな、などと、腹巻についてしばし思いを馳せてしまった。
そして程よい時間を消費して遂にラスボスとの一騎打ち。当然のように圧勝。最初は劣勢だが成長して敵を倒すというのが定番だが、最初から圧倒的に強いヒーローがいてもいいし、ブルース・リーにはこれが似合っている。
そしてその決闘シーンは迫力がある。そこだけを見るとコミカルなブルース・リーの表情や怪鳥音と呼ばれる奇声も、闘いを通して見ると次第にゾーンに入っていく様子を表現していることが分かり引き込まれる。ヌンチャクのアクションも含め、真似したくなる気持ちはよく理解できた。残像を描きながらブルース・リーが構えるシーンはカッコよかった。
最初に一気に敵をすべて倒してしまっていたら、仲間は犠牲にならずに済んだのに、という思いがないわけではないがそれは仕方ない。途中に殺人鬼まがいの事をしたので、最後まで描かないあのエンディングで丁度よいのかもしれない。ハッピーエンドではないが、やりたいことは思う存分出来たという納得感はある。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/出演 ロー・ウェイ
製作 レイモンド・チョウ
出演 ブルース・リー/ノラ・ミャオ/ティエン・フォン/橋本力/ボブ・ベイカー/トニー・リュウ
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