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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「二重生活」 2016

二重生活

★★★☆☆

 

あらすじ

 大学院の論文のテーマとして、担当教授から誰か一人を尾行することを提案された女は、本屋でたまたま見かけた近所の男を尾行することにする。

 

感想

 大きな家で美人の奥さんと可愛い娘と住む男。絵にかいたような幸せな家庭だが実は男には愛人がいた、というのは割とよくある話。ただそれをその男を尾行することで知ったとしたら、また話は別で俄然面白くなってくる。主人公がのめりこむのも良く分かる。

 

 しかし尾行という行為は、対象者を観察し、これから何をするかだったり、なぜそんなことをしたのかだったりを常に考えながら後を追うことになる。相手の事を思い、相手の立場になってみたりするということで、確かに哲学的な行為になるのかもしれない。尾行とまでいかなくても、ある場面である人を観察することもきっと同じことだ。映画の中では、様々な場面で主人公以外の人間たちによる主人公への視線が感じられる。観察しているのは主人公だけではない。

 

 

 尾行の面白さや、だれもが二面性を持ちながら素知らぬ顔で日常生活を送っている、というのは良く分かるのだが、主人公が同棲相手とうまくいかなくなったというのは良く分からなかった。尾行に夢中になって不規則な生活になり、男はそれに疑いを持ったことが原因なのだが、そんなの最初にただそういう事をすることになったと男にひとこと言うだけで済む話だ。

 

 尾行という行為に後ろめたさを感じていたからなのか、そもそもそれはきっかけにすぎず、すでに心は離れていたからということからなのかもしれない。もしくは他者とうまく関係を結ぶことができない主人公の心の問題を表しているのかもしれないが、そのあたりが納得できるような描写はなかった。

 

 映画は全体的にセリフが少なく、登場人物たちの心境を表情や動きで表現しているのだが、そんな中で突然、主人公が尾行の対象者の男に自分の抱えている心の内を長セリフで語るシーンがあって、すごい不自然だった。主人公としては、尾行することでその男の事が分かった気になり、どこかで彼ならわかってくれるという確信みたいなものがあったからなのかもしれないが、それにしても唐突な自分語りだった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 岸善幸

 

原作 二重生活 (角川文庫)

 

出演 門脇麦/長谷川博己/菅田将暉/リリー・フランキー/河井青葉/篠原ゆき子/宇野祥平/岸井ゆきの/西田尚美/烏丸せつこ

 

音楽 岩代太郎

 

二重生活

二重生活

 

二重生活 (小池真理子) - Wikipedia

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