★★★☆☆
あらすじ
かつての恋人の遺書に遺言執行人として指名されていることが判明し、現地に向かった女性。
感想
遺言執行人としての仕事をしているうちに謎の組織の存在を知り、興味を持って調べているうちに、それに呼応するかのように周りで奇妙な出来事が起こり…というストーリーは何となく理解できるのだが、内容についてはほとんど意味が分からなかったというのが正直なところ。
一つの文章が長く、段落も長く、言っていることも難解で読むだけでもめちゃくちゃ時間がかかる。隠喩や暗喩、引用などが散りばめられ、歴史上の出来事が語られて、読む人の教養を試されている様な気もする。とはいえ、著者自身は一つのストーリーの中に余計なものをたくさん放り込んで、複雑めいた雑多なイメージを作り出そうとしているのかもしれない。その難解さが議論を呼び語り継がれる。
無理やり解釈すると、分かった気になっている自分の住む世界でも、自分の知らない所で思ってもみないことが進行しているかもしれない、それを知るには自ら動くしかない、といったところか。それもあるけどそれ以外もあるというような、簡単には結論付けることが出来ないような内容。また何年かして読み返してみると、違う印象を持つのかもしれない。
これでトマス・ピンチョン作品の中で読みやすい方らしいのだが、となると、なかなか他の作品には手が伸びることはなさそうだ。ノーベル賞受賞とかなんらかのニュースで話題になった時に、もしかしたら他作品を読んでみようという気になるかもしれないが。
著者
トマス・ピンチョン
登場する作品
「競売ナンバー49の叫び」
ロードランナーとワイリー・コヨーテ 全3話収録 (日本語字幕版)
The Rise of the Dutch Republic: a History Volume 1 (English Edition)
「殺すも生かすもウィーンでは」
「最後のピューリタン」 サンタヤーナ