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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「宮本から君へ」 2019

宮本から君へ

★★★★☆

 

あらすじ

 泥酔して寝ている間に恋人が襲われてしまった男は復讐を誓う。

 

感想

 冒頭で主人公は顔面が腫れ上がった状態で登場し、そこから現在とそれに至った過去の様子が交互に描かれていく。彼がなぜそんなボロボロの状態になったのかもその過程で次第に明らかになっていく。

 

 途中で松山ケンイチら何人かの役者たちが、一つのシークエンスに登場するだけであとは消えてしまうことが続いて少し気になったが、映画の前にテレビドラマ版があり、彼らはそこで登場していた人物たちのようだ。ドラマを見ていた人たちはより楽しめるのだろうが、そうではなくても蛇足には感じない。

 

 

 幸せそうなカップルの話が続くのかと思っていたら突然起きる悲劇的な事件。遠い場所にいてどうする事も出来ないというのも辛いが、近くにいたのに助けることができなかったというのも辛い。被害者となった彼女の、主人公に対する怒りは理不尽かもしれないが、理不尽なことをされれば理不尽な怒りが湧いてくるのも不思議ではない。一つの悲劇はいくつもの悲劇を生んでしまう。そしてここから主人公の復讐が始まる。

 

 この事件があったことを知った時からそうだったが、このあたりから主人公の愚直さが際立ってくる。自分の感情をさらけ出し、思ったままに行動する。しかも普通に戦ったら勝てそうもない相手に対し、法に訴えるでもなく武器を使うでもなく、シンプルに素手で向かっていく真っ直ぐさだ。頭が悪いと言えばそうなのかもしれないが、それで倒さなければ自分が納得できないのだろう。やられてもそれでも向かっていく主人公の姿に、次第に圧倒されていく。

 

 そして復讐のことしか考えられないような状態にあるにもかかわらず、それでもちゃんと仕事に行っているのは偉いなと感心してしまった。彼は思ったままに、ではなく、強い信念に基づいて行動していると言えるのかもしれない。だが仕事中でも復讐のことは常に頭にあって、なんとなく体を鍛えようとしているのは面白かった。

 

 主人公を演じる池松壮亮が素晴らしく、嘘みたいなキャラだが本当にそんな奴がいるのかもと思わせるようなリアリティを与えていた。恋人役の蒼井優や敵役の一ノ瀬ワタルらその他の出演陣も皆いい演技を見せている。ピエール瀧や佐藤二朗の男臭さあふれるおじさん達も良かった。

 

 勝てるはずのなかった相手を倒すクライマックスの決闘シーンもリアリティがあり、「あきらめなければ負けることはない」の典型みたいな展開だった。彼をそのまま真似するのはアレだが、そのスピリットは見習いたくなる。本人も言っていたように、彼のやっていることは確かに自分勝手なのかもしれないが、突き抜けているからもはや気持ちが良い。もしかしたら世の中は、皆がもっと自分勝手に生きることでうまく回るのではないかとさえ思えてくる。

 

 主人公の恋人も激しい性格で、互いに呼応してしまうと劇画調になってクサくなってしまいそうなところを、時々それを笑いに変えることでガス抜きし、上手くバランスを取っている。見ているうちに自分も頑張ろうと活力が湧いてくるような映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 真利子哲也

 

原作 宮本から君へ【合本版】(1) (CoMax×ナンバーナイン)

 

出演 池松壮亮

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井浦新/一ノ瀬ワタル/柄本時生/星田英利/古舘寛治/佐藤二朗/ピエール瀧/新井英樹/螢雪次朗

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音楽 池永正二

 

宮本から君へ

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