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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「赤を身につけるとなぜもてるのか?」 2015

赤を身につけるとなぜもてるのか? (文春e-book)

 

★★★☆☆

 

内容

 環境的な要因や物理的な感覚が及ぼす人の行動について紹介した本。

 

感想

 自分の行動について考えるとき、自分で考え、自分の意志で行動していると考えがちだが、実際は多くの影響を受けている。潜在意識のような自分の内面に潜むものだけでなく、触り心地や匂い、色など外的な要因も人の行動に影響を及ぼしている。

 

 温かい物を持っていると気前が良くなり、人を信用しやすくなったり、硬い椅子に座って交渉すると譲歩しなくなったりする。比喩的表現で「温かい人柄」や「強硬な態度」なんて言ったりするが、まさにその通りである。

 

 

 赤ん坊が五感を通じて手に入れた情報、「暗い」「やわらかい」などの感覚のフォルダに、その後に獲得した感情を振り分けていくかららしい。不愉快な感情はザラザラした触感と似ているから「ザラザラ」フォルダに入れる、というように。そして、いつの間にかザラザラした物に触れると、不愉快になるということが起きるようになる。

 

 温度や手触り、重さ、色、光、匂いなどの外部の要因を変えるだけで、簡単に人間の心理や行動に影響を与えられるというのは面白い。意外と人間は単純だ。本書ではそれぞれについて丁寧に実験の結果などを紹介してくれるが、中盤はそれまでの内容から予想できることばかりなので、ちょっと飽きる。ちょっと真面目すぎた。

 

 だがその後の道徳観と清潔さの関連を見ていく章は意外性があった。これまでの流れから言えば、清潔な人ほど誠実であるはずなのだが、実際はシャワーを浴びた後などの清潔さを感じている方が不正を行いやすいそうだ。これは今は心もきれいだから多少は汚れてもいいだろうという心理が働くかららしい。また自分と他人に対してのモラルの反応もなかなか複雑で、なかなかに興味深い。

 

 外部の要因が人間の心理や行動に影響を与える性質を、逆に積極的に活用して役立てようとする最終章も良かった。胡散臭い目で見てしまう「風水」や「お祓い」も、それなりに理に適っているようだ。

 

 外的要因で人の行動を変えられるならこんな簡単なことはないわけで、色々試してみたいと思わせてくれる本だった。赤い服でも着ようかという気になる。

 

 

著者

タルマ・ローベル

 

 

 

登場する作品

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