★★★☆☆
あらすじ
我が家のリフォームをすることにした主人公。
感想
リフォームに関する小説という事で、くどいくらいに間取りの説明が繰り返される。 おかげでもしもこの家を訪れることがあったら「ここはもともと茶室だったところですね?」とか、渡辺正行だか渡辺篤史だかばりにはしたり顔で言えそうな気分。まぁそんな時が来ることはないのだが、実際に訪れて想像通りか確認したくなる。
100均のアイテムを一つ買っただけで暮らしやすさが向上することもあるくらいだから、リフォームなんかしたら生活の質が劇的に向上するのは間違いない。なので不満を感じたらすぐにやるべきだが、なかなかできない。
理由はいろいろあって、なんか暮らしにくいが何が問題かが分からなかったり、問題は分かっているがどうしたらよいのか分からない、やりたいことは決まっているのだが費用がいくらかかるのか分からない、などなど色々ある。そもそもどこに何を頼めばいいのかもわからない。人生で何度もすることでもないので分からないことばかりである。
ようやく工務店に連絡を取ってリフォームするとっかかりを掴んでも、そこで考えていたプランの問題点や新たな問題点などが専門家の視点から指摘され、再度計画を練り直さないといけなくなる。そしていつの間にか大幅に予算を超えている。
いざリフォームが始まれば、我が家に入れ替わり立ち替わり業者がやって来る。彼らにお茶を出したり、無愛想な職人たちに細かな自分の要望を伝えて作業をお願いしなければいけないこともある。自分の家なのにしかもお金を払う依頼主なのに、何かと気を使わなければいけない気苦労もある。
この自分のテリトリーによく知らない他人がやって来るという不安は良く分かる。さらに彼らにとっても自分の職場であるので、その時は自分の職場ということになる。しかも職人たちはリフォームを請け負った工務店に依頼されてやって来ているので、施主とは直接の関係はない。一つの家の中で微妙な力関係が渦巻くことになる。
世の中のすべての無知と未開と粗野と下品をひとっところに集めたような馬鹿騒ぎであった。
p247
2階で仕事をしながら階下の職人たちの馬鹿騒ぎを不安な気持ちでじっと耐える主人公。工事に関わる不謹慎な冗談や悪口を職人同士で言い合っているのを、たまたま耳にしてしまい、深く傷つく主人公。おどけた語り口から、ときおりしんみりとした口調になる主人公に同情してしまう。
そしてついに完了したリフォーム工事。様々な困難を乗り越えて成し遂げられたという事もあって、嬉々として語られる生まれ変わった家の様子を読んでいると、こちらまで解放感や爽快感が満ちてくる。
最後に生活が向上する喜びが待ち受けているのは分かったが、そこに至るまでに様々な思い悩むことがあることも分かってしまい、結局はリフォームに手を付ける事に腰が重いままになってしまいそうだ。
著者
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