★★☆☆☆
あらすじ
その日ぐらしの怠惰な日々を過ごしていた二人の男は、ヤクザに目を付けられたことをきっかけに人生を見つめ直す。
井浦新、成田凌出演。135分。
感想
大麻を売ったりしながら、ヤクザでもカタギでもない中途半端なポジションで生きる二人組が主人公だ。序盤は、短いシークエンスで様々なエピソードがダイジェスト的に語られる。
各シークエンスは、過激だったり、アニメを使ったり、シュールだったりと、それぞれ演出に趣向が凝らされている。トガった映画にしたかったのだろう。だがどれも騒々しいだけで、さして面白くはない。これがずっと続くのならキツイなと思い始め、それからしばらくしたら、ようやく落ち着いた展開となった。
ひょんなことからヤクザに目を付けられてしまった二人は、これが潮時と、それぞれ真っ当な道を歩もうとする。大麻を売ってヤクザもどきのことをしていたくせに、いざ本物のヤクザが出てきたらそそくさと撤退するなんて中途半端で情けないが、彼らのこれまでの生き様を表しているとも言える。
井浦新演じる兄貴分は大阪の実家に戻って家業を継ぐが、成田凌演じる弟分は家族を持つもまともな仕事が見つからず、結局ヤクザの世界へとズルズルと引きずり込まれていく。
中盤はこの弟分の話が中心となる。しかし、これまでと打って変わり、ありきたりで凡庸なストーリーになってしまった印象だ。それに、これを描きたかったのなら序盤の騒々しいだけのエピソードはいらなかったのでは?とも思ってしまった。
そして予想通りの結末に向かう。だが唐突な出来事で、その流れはぶった切られた。面白いというよりは意味不明で、ずいぶんと都合が良いように思えた。それに弟分の窮地を救った狂人は、刀をどこに隠し持っていたのだ?という素朴な疑問もある。
終盤は、離れ離れになった兄貴分が弟分を懐かしむ展開となる。だが正直、そういう話だったの?と呆気に取られただけだった。彼らが仲が良いのは見ていて伝わったが、その絆を感じるようなエピソードは全くなかったので、まさか二人の友情を描いているのだとは思わなかった。それなら逆に中盤の話は不要で、序盤のダイジェスト的な話をもっとじっくり描くべきだった。
話があちこちに飛んで、まとまりのない物語だ。既視感もある。おそらく、今まで見てきた映画の気に入ったシーンを真似したかったのだろう。それらをつなぎ合わせただけに見える。観客はともかく、監督の満足度は高そうだ。
終盤の涙を誘っているらしいシーンもまったく感情移入できず、一体何を見せられているのだ?と冷めた気持ちで眺めるだけだった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/音楽 かなた狼
出演 井浦新/成田凌/紗羅マリー/津田寛治/奥田瑛二/LiLiCo/阿部亮平/裴ジョンミョン/高良健吾/海原はるか・かなた/鳥肌実/石橋穂乃香
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