★★★★☆
内容
映画とその映画で使われた音楽の紹介。
感想
ある映画を中心にそれに関連する映画や音楽が各章で紹介されていく。取り上げられる映画はアカデミー賞などの賞レースで名前が挙がるような作品ではなく、コメディやティーンムービーなどの娯楽作品が中心。名作や大作といわれる映画は心身が充実しているときに観るべきなのではないかと身構えてしまって、なかなか手が出なかったりするのだが、ここで挙げられている作品たちは気になれば肩ひじ張らずに気軽に観られそうなのがいい。
そしてそういった作品はえてして十把一絡げのB級作品群といった印象を持ってしまいがちなので、逆にその映画の内容をちゃんと紹介してくれるのはありがたい。一見するとただのおバカなコメディ映画にしか見えなくても、その裏には社会に対する痛烈な批判や世相を斬るメッセージが込められていたりする。今まで存在は知っていたが特に観たいとも思っていなかった映画たちが急に魅力的に思えてきて、観たい映画リストにたくさん映画を追加してしまった。
それから、それぞれの映画で使われている音楽についての解説も興味深かった。使われている音楽の歌詞は字幕にされるものもあるが、そうでなければ曲の雰囲気から感じ取るだけしかない。でもロックなどの既存曲が使われる場合は、やはりそこに何らかの意味やメッセージが込められている。とはいえ、ザ・クラッシュの「ロンドン・コーリング」のように歌詞の内容は関係なく、ただロンドンでのシーンだからというだけで使われるような曲もあるというのは面白かったが。
確かに一度「007 ダイ・アナザー・デイ」を観ていてそう思ったことがある。
監督や脚本家、役者つながりだったり、使われている音楽のミュージシャンつながりだったりで、映画や音楽がつながっていきそれらの知識が増えていくのは楽しい。そして、自分はベタベタなコメディ映画は敬遠しがちなのだが、この本を読んでいたらいくつか観てみようかなといういう気になった。
著者
長谷川町蔵