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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

小説

「吾輩は日本作家である」 2008

★★★☆☆ あらすじ 編集者に次作のタイトルを「吾輩は日本作家である」にすると告げた作家。 感想 カナダに住む黒人作家が、次作のタイトルを「吾輩は日本作家である」と決めたことから始まる物語。タイトルを聞きつけた日本大使館の人物が接触を図ってきたり、…

「流」 2015

★★★☆☆ あらすじ 中国内戦で敗れて台湾に逃れてきた祖父を中心とした一家で育った青年。直木賞受賞作。 感想 70~80年代の台湾の若者の青春小説。この当時の日本と似たようなヤンキー的要素もありながら、そこに中国との関係や、国内の本省人と外省人という立…

「ホサナ」 2017

★★★☆☆ あらすじ ドッグランで出会った女に、犬好きの集まるバーベキューパーティーに誘われた男。 感想 著者名だけ見てネットで注文したら、届いた本があまりにも分厚くて若干怖気づいてしまった。同じ著者の「告白」と同じくらいの分厚さで、900ページ以上…

「日はまた昇る」 1926

★★★☆☆ あらすじ パリで暮らすアメリカ人の男は、仲間と共にスペインの祭りを訪れ、牛追いと闘牛を見物する。 感想 最初はユダヤ人の元ボクサーの男が主人公で、その友人が第三者の視線で語っていく話なのかと思っていた。序盤のしばらくはそんな雰囲気だった…

「信長の定理」 2018

★★★★☆ あらすじ 「働きアリの法則」に気付いた信長が、配下の人間が皆良く働くためにはどうしたらいいのか思案する。 働きアリの法則 - Wikipedia 感想 信長の生涯が要所要所を踏まえて描かれていく。今回面白かったのは、信長に仕えた者たちの事が詳しく描…

「北回帰線」 1934

★★★☆☆ あらすじ パリを彷徨うアメリカ人。 感想 序盤は状況が分かりづらく、たくさん人も出てきて、ストーリーを把握するのが難しく、かなり戸惑ってしまった。しかし、それでも頑張って読み進めているうちに分かってくるのは、この小説にはちゃんとしたスト…

「ダブリナーズ」 1914

★★★☆☆ あらすじ アイルランド・ダブリンで暮らす人々の姿を描いた短編集。別邦題に「ダブリン市民」「ダブリン市井事」「ダブリンの人々」 「ダブリン人」「ダブリンの市民」「ダブリンの人びと」など。 感想 理解できるがなんとも言えないような気分になる…

「イエスの幼子時代」 2013

★★★☆☆ あらすじ 移民としてやってきた男と、彼と行動を共にする母親を探す男の子。 感想 移民として一緒にとある街にやってきた初老の男と母親を探す男の子の物語だ。その冒頭からどこかふわふわしていて、いかにも寓話的だ。以前に何があったのか、主人公で…

「スローターハウス5」 1969

★★★★☆ あらすじ 時間を行ったり来たりすることができ、宇宙人にさらわれたこともある男の生涯。 感想 第2次大戦に出征し、捕虜となってドレスデン爆撃に遭遇した体験がメインに描かれている。しかし、敵の捕虜になっていたとはいえ、味方に爆撃を受けた気分…

「狂犬の眼」 2018

★★★★☆ あらすじ 左遷され田舎の駐在所に勤務していた主人公は、所轄の工事現場に敵対する組織のトップを殺害したとされる手配中のヤクザが潜んでいる事を知る。「孤狼の血」シリーズの2作目。 感想 前作から時間が経過し、警察官である主人公は左遷され、田…

「異色作家短篇集14 虹をつかむ男」 2006

★★★☆☆ あらすじ 妻との外出中に空想にふける男を描いた1939年の表題作「虹をつかむ男(別の邦題:ウォルター・ミティの秘密の生活)」を含む短編集。 感想 表題作「虹をつかむ男」を原作とした映画「虹を掴む男」をリメイクした「LIFE!」が面白かったので読…

「銀河ヒッチハイク・ガイド」 1979

★★★☆☆ あらすじ 地球が取り壊されてしまうも、宇宙船をヒッチハイクした宇宙人の友人に助けられた地球の男。 感想 元々はラジオドラマだったものを小説化したということで、よくある一話完結のコメディドラマになったところを容易に想像できる。設定を生かし…

「ホワイトラビット」 2017

★★★☆☆ あらすじ 仙台市で起きた奇妙な立て籠もり事件の顛末。 感想 ある男を探して家に侵入した犯人。犯人は妻を誘拐されて脅されており、押し入った家の母と息子も何やら隠し事があるようだ。さらにはそこに謎の男も加わって、というややこしい展開。そこか…

「孤狼の血」 2015

★★★★☆ あらすじ 暴力団同士の抗争の火種がくすぶる街で、抗争阻止に奔走するやり手の上司と行動を共にする新人の刑事。 感想 やくざと親密に交際して重要な情報を引き出すベテランの刑事。時には違法な手を使いながらも、民間人に危害が及ばないように尽力し…

「秀吉の活」 2017

★★★☆☆ あらすじ 農民から天下人となった豊臣秀吉の生涯を、「就活」「婚活」「妊活」など「活」に着目して物語る。 感想 「昇活」「凡活」など、ん?と思うような強引なものもあるが、「活」というくくりで秀吉の生涯が語られる。個人的に興味深かったのは、…

「献灯使」 2014

★★★☆☆ あらすじ ひ孫を育てる100歳を過ぎた作家の男。他、全5編の短編集。 感想 表題作の「献灯使」は、東日本震災の影響を強く感じさせるような、荒廃し大きく変容した東京が舞台となっている。100歳を超えた老人たちが普通に元気に働いており、しかし若い…

「トーニオ・クレーガー 他一篇 」 2011

★★★☆☆ あらすじ 少年時代を過ごした街を出て、作家として名を成した男、トーニオ・クレーガー。別の邦題タイトルとして「トニオ・クレーゲル」「トニオ・クレエゲル」など。他一篇は「マーリオと魔術師」。 感想 美しい少年との友情や少女への恋心など、よく…

「生は彼方に」 1978

★★★☆☆ あらすじ 詩人として生きた男の人生。 感想 いろんなテーマが含まれている様な長編小説。その中でも青春、若さゆえの醜さが強く感じられる内容となっている。初めて得た恋人への嫉妬や独善的な要求、自己愛の強さと他者の視線との間で揺れるアイデンテ…

「息吹」 2019

★★★★☆ 内容 表題作「息吹」を含む9つのSF短編集。 感想 どの短編も読みごたえのある内容。気軽に読めるというよりは、じっくりと味わってどっしりと疲れがくるような濃厚さがある。一つの短編を読み終えるたびに本を閉じ、しばらく考え込んでしまうような深…

「愛のようだ」 2015

★★★★☆ あらすじ 40代にして免許を取った男は、車を購入して仲間と遠出を繰り返す。 感想 東京から伊勢神宮、草津温泉、富山、岡山と、各地へ車で向かう道中が描かれる。しかし、途中で同乗者と運転を交代しながらではあるが、主人公は免許を取ったばかりなの…

「ダスクランズ」 1974

★★★☆☆ あらすじ ベトナム戦争末期にプロパガンダ政策を担当するアメリカ人と、アフリカ南部で象狩り遠征に出かけた開拓民の男、二人の物語。ノーベル賞作家のデビュー作。 感想 以前読んだこの作家の作品「恥辱」が面白かったので、デビュー作に手を出して見…

「ヌメロ・ゼロ」 2015

★★★☆☆ あらすじ 創刊のための試作版を準備している新聞の編集長から、回想録のゴーストライターを依頼された男。 感想 創刊準備はしているが、創刊することはないだろう新聞の編集室にやって来た男。そこでは毎日のように新聞社の編集方針についての議論がさ…

「冗談」 1967

★★★★☆ あらすじ 女友達に送った手紙に書いた冗談が原因で、人生を狂わされた男が久しぶりに故郷を訪れる。 感想 手紙に書いた冗談がきっかけで大学を追われ、人生が狂ってしまった男。紆余曲折を経た彼が、15年ぶりに故郷に帰ってきたところから物語が始ま…

「AX」 2017

★★★☆☆ あらすじ 恐妻家で凄腕の殺し屋は、家族の事を思い引退を考えている。連作短編集。 感想 伏線があり、とぼけた会話があり、驚きの展開がありといった著者得意の連作短編集だ。全体としては大きな物語といえるのだが、特に最初の数編は小粒な印象だ。主…

「ランサローテ島」 2000

★★★★☆ あらすじ スペインのランサローテ島に余暇を過ごすためにやって来た男は、現地で同じような観光客、ベルギー人の男と二人組のドイツ人女性と知り合う。 限定 レア ピンバッジ 風車小屋ランサローテ島カナリア諸島 ピンズ フランス メディア: 感想 物語…

「悲しみよこんにちは」 1954

★★★★☆ あらすじ 父親とその若い愛人と共に避暑地の別荘にやって来た年頃の少女。そこに死んだ母親の友人がやって来て、別荘での暮らしに変化が訪れる。 感想 若い頃は何にも囚われず、自由気ままに生きたいと無邪気に思うものだが、でも心のどこかで、そうは…

「82年生まれ、キム・ジヨン」 2016

★★★★☆ あらすじ 突然様子がおかしくなってしまった一児の母の半生。 感想 どこにでもいそうな一人の女性の半生が描かれていく。そこから見えてくるのは、女性の生きづらさ。自分よりも長男である弟が明らかに優遇され、年頃になれば見知らぬ男に話しかけられ…

「BUTTER」 2017

★★★★☆ あらすじ 容姿端麗とはいえないながら男たちを手玉に取り、殺害した容疑で逮捕された女。そんな世間の注目を集める女を取材することになった女性記者。 感想 実際にあった事件をモデルにした小説。男を騙して金を奪う女と言えば、誰もが美人を想像して…

「にんじん」 1894

★★★☆☆ あらすじ 赤茶けた髪、そばかすだらけの顔で「にんじん」とあだ名される少年の物語。連作短編小説。 感想 「にんじん」と呼ばれる少年と、その家族を中心とした小話が連作で綴られる。少年を主人公にした物語なので、ほんわかした雰囲気の物語なのかと…

「素粒子」 1998

★★★★☆ あらすじ 母親を同じくしながら互いのことを知らずに育った兄弟の、それぞれの人生。 感想 主人公は分子生物学者の弟。それと対比するように国語教師の兄の人生も描かれていく。 物語は彼らの祖父の人生を描くところから始まって、フランスらしい回り…