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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「強盗プロフェッショナル」 1972

★★★☆☆ あらすじ 改築のため銀行が仮営業の店舗として使用しているトレーラーハウスを、丸ごと奪う作戦を持ち掛けられた犯罪の達人ドートマンダー。ドートマンダー・シリーズ第2作目。 感想 主人公一味らが銀行を建物ごと奪おうとする銀行強盗ものだ。まずは…

「大いなる助走」 1979

★★★★☆ あらすじ 地方の同人誌に小説を書いたところ、直木賞的な文学賞の候補となり、受賞を確実にするために奔走することになった青年。 感想 当時の文壇、文学界を面白おかしく描いた物語だ。様々なエピソードが盛り込まれているが、中でも鮮烈に登場した新…

「セロトニン」 2019

★★★★☆ あらすじ 高収入の仕事に就いて資産もあり、恋人もいて恵まれた生活を送る中年の男は、ある日蒸発することを決意する。 感想 何もかもが嫌になってしまった中年男が主人公だ。冒頭の、スペインの別荘で若い恋人と余暇を過ごすという他の人なら羨みそう…

「あひる」 2016

★★★★☆ あらすじ 両親がアヒルを飼い始めたことで起きた日常の変化を描く表題作の他2編を収録した短編集。 感想 シンプルで分かりやす文章で綴られる短編集だ。 表題作は、アヒルを飼い始めた両親が、近所の子供たちと交流を持つようになる様子を娘の視線で…

「炎環」 1964

★★★★☆ あらすじ 鎌倉幕府成立前後の出来事を、各人物の目を通して描く連作短編集。直木賞受賞作。 感想 源頼朝の挙兵から鎌倉幕府が成立し安定期を迎えるまでが、短編ごとに主人公を変えながら描かれていく。今やっている大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見てい…

「さらば、シェヘラザード」 1970

★★★★☆ あらすじ 締め切りが迫るもなかなか筆が進まず、焦るポルノ小説のゴーストライター。タイトルのシェヘラザードは、「千夜一夜物語」の登場人物で語り手である女性から取られていく。 感想 普通に小説が始まったかと思いきや、第一章が終わった後にまた…

「今夜、すべてのバーで」 1991

★★★★☆ あらすじ 若い頃から酒を飲み続け、ついに限界を迎えて入院することになった男。 感想 今後飲めなくなるからと、入院前にワンカップ酒を二つ、立て続けに飲み干してしまうようなアル中の男が主人公だ。何となく依存症になる人間はだらしがなく、意志が…

「日曜日だけの一カ月」 1975

★★★☆☆ あらすじ 不倫をするなど性的問題を起こした牧師は、1か月の隔離生活を送ることになる。 感想 性的問題を起こし隔離生活を送る主人公が書いた、手記の形式を取る小説だ。毎日書くように指示されたため、一日一章で一か月分、31の章からなっている。そ…

「鑑識レコード倶楽部」 2017

★★★☆☆ あらすじ 週に一度レコードを持ち寄り、コメントや評価は禁止でただじっくりと鑑識するように音楽を聴く倶楽部を立ち上げた主人公と友人。原題は「The Forensic Records Society」。 感想 コメントや評価を言い合うことなく、ただ持ち寄ったレコードを…

「生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方」 2017

★★★★☆ 内容 出退勤時間も休むのも自由でその連絡は不要、さらには嫌いな作業をやるのは禁止と、斬新な制度を次々と導入している超ホワイト企業の取り組みの様子を紹介する。 好きな日に出勤・欠勤する・天然えび工場 | [ 旨い!! 天然エビ パプアニューギニア…

「寝相」 2014

★★★☆☆ あらすじ 病後の祖父と狭い家で暮らし始めた孫の若い女。表題作の他「わたしの小春日和」「楽器」の3つの物語を収録。 感想 表題作は、老人と若い女の二人暮らしの様子が淡々と描かれていくのかと思っていたら、次第に家族四代の歴史が語られる壮大な…

「女優 岡田嘉子」 1993

★★★☆☆ 内容 戦前の舞台・映画のスターで、ソ連に亡命した女優 岡田嘉子の生涯。 炎の女の70年―フォト・ドキュメント・岡田嘉子 (1973年) Amazon 感想 自分が岡田嘉子の存在を知ったのは「男はつらいよ」を見た時だった。そんなに出演時間はなかったのだが、…

「短くて恐ろしいフィルの時代」 2008

★★★☆☆ あらすじ 小さな国とそれを取り囲むように存在する大国。小国の異変をきっかけに諍いが起き、フィルという名の男が大国で台頭する。中編小説。 感想 小国の人口は7人。だけど国土が狭すぎて1人しかいることが出来ず、他の6人は大国の場所を少しだけ…

「スタンフォードの権力のレッスン」 2020

★★★☆☆ 内容 権力とは何か、どのように機能して影響を及ぼすのか、を心理学教授が解説する。原題は「Acting With Power: Why We Are More Powerful Than We Believe」。 感想 タイトルからなんとなく「権力の握り方」みたいなものが書かれているのかと思った…

「なめくじに聞いてみろ」 1962

★★★☆☆ あらすじ 父親が育てた弟子の殺し屋たちを倒すために上京してきた息子。別タイトルは「飢えた遺産」。 感想 父親の弟子の殺し屋たちを、主人公の息子が一人ずつ消していく物語。ただ順番に弟子を見つけ出してきては倒していくのではなく、途中から敵が…

「トーキング・トゥ・ストレンジャーズ 「よく知らない人」について私たちが知っておくべきこと」 2019

★★★★☆ 内容 運転中に方向指示器を出し忘れただけで白人警官に逮捕・拘留されてしまい、留置場で自殺した黒人女性の事件から、見知らぬ他者と接するときに何が起きているのかを考察していく。 感想 題材となった事件はとても悲しいことには違いないが、アメリ…

「ならずものがやってくる」 2010

★★★★☆ あらすじ 窃盗癖のため精神科に通う女性を起点に、その関係者たちの過去や未来のある一時期の様子が描かれていく。ピュリッツァー賞、全米批評家協会賞受賞作。原題は「A Visit from the Goon Squad」。 感想 窃盗癖のある女性の物語から始まり、その…

「暴虎の牙」 2020

★★★★☆ あらすじ ヤクザの息子として生まれ、ヤクザを憎む若い男は、なんの後ろ盾もない徒党を組み、広島で天下を取ることを夢見て暴力団に抗争を仕掛ける。「孤狼の血」シリーズ第3作目で完結編。 感想 第一作目で描かれたよりも前の時代設定で物語はスター…

「ブラウン神父の童心」 1911

★★★☆☆ あらすじ ブラウン神父が数々の事件を解決していく短編集。シリーズ第1作目。別邦題「ブラウン神父の無心」「ブラウン神父の無垢なる事件簿」など。 感想 推理小説で、事件を解決していく主人公がブラウン神父だ。シャーロック・ホームズやエルキュー…

「クジラアタマの王様」 2019

★★★☆☆ あらすじ 現実と夢の世界がつながっていることに気付いた3人の男たち。 感想 19年発表の作品で、09年の新型インフルエンザ騒ぎを下敷きにしているようだが、現在進行中のコロナ禍の世界を予言したかのような物語だ。そしてさらに言うと、今年発生し、…

「明智小五郎事件簿1 「D坂の殺人事件」「幽霊」「黒手組」「心理試験」「屋根裏の散歩者」」 2016

★★★★☆ あらすじ 古書店で起きた殺人事件の謎を解く「D坂の殺人事件」他、全5編。江戸川乱歩の明智小五郎もの作品を発表順ではなく、事件の発生順に並べた全集の第一巻。 感想 明智小五郎が初めて登場する「D坂の殺人事件」では、彼が最初犯人として疑われて…

「ポスト・オフィス」 1971

★★★☆☆ あらすじ 恵まれているとは言えない環境の郵便局で働き始めた男。 感想 郵便局のつらい環境で働き始めた男が主人公だ。昔の話ではあるが、アメリカもずいぶんと酷い労働環境だったのだなと少し驚いた。だが主人公は過酷な待遇にただ甘んじるのではなく…

「ほかならぬ人へ」 2009

★★★★☆ あらすじ 親の反対を押し切って結婚するも妻に浮気をされてしまった男。直木賞受賞作。 感想 由緒ある家系の家庭に育つも、家族の中で常に劣等感を抱えながら生きてきた男が主人公だ。はたから見ると恵まれた環境で何を言っているのだと腹立たしさを覚…

「THE RHETORIC 人生の武器としての伝える技術」 2007

★★★★☆ 内容 西洋で古くから学ばれていたレトリックのテクニックを紹介する。原題は「Thank You for Arguing」。 感想 文章術の本かと思って手に取ってみたのだが、「レトリック」とはもともと弁論・演説の技術を指していたようだ。 レトリックとは、聞き手に…

「見仏記 道草篇」 2019

★★★★☆ 内容 いとうせいこう・みうらじゅんの二人が東北・九州・長野、そして中国四川省の仏像を見てまわる紀行記。シリーズ8作目。 感想 一作目は読んで、シリーズとなったそれ以降は全く読んでいなかったのだが、今作は中国の四川省に行った箇所が気になっ…

「見るレッスン 映画史特別講義」 2020

★★★★☆ 内容 1936年生まれの映画評論家・フランス文学者である著者による映画にまつわる話。 感想 「映画史特別講義」と硬いタイトルがついているが、キッチリとした授業のようなものではなく、テーマを決めてそれをについて著書が思いつくままに考えを述べる…

「ブッチャー・ボーイ」 1992

★★★★☆ あらすじ アイルランドの田舎町の貧しい環境で暮らす少年は、友人と過ごす時間が心の支えとなっていたが、ロンドンから引っ越してきた一家の登場によって、様々な歯車が狂い始める。 感想 父親は飲んだくれで母親は心を病み、最初から人生ハードモード…

「ヘヴン」 2009

★★★★☆ あらすじ 壮絶ないじめにあっていた中学生男子は、ふとしたきっかけから同じようにいじめにあっていたクラスの女子と手紙をやりとりをするようになり、時々二人で会うようになる。 感想 いじめを受けて孤独だった主人公にとって、何気ない会話ができる…

「十二月の十日」 2013

★★★★☆ 内容 表題作を含む10の短編集。 感想 短いものもあるが、短編と呼ぶには長すぎるようなボリューム感の小説が収められた短編集。最初の2,3編くらいはあまりピンとこなかったのだが、それ以降から徐々に面白く感じるようになってきた。 中でも一番気…

「熱帯」 2018

★★☆☆☆ あらすじ なかなか筆のすすまない小説家の男は、かつて入手するも途中で紛失し読了できなかった不思議な本の存在を思い出す。直木賞候補作。 感想 「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」を意識した小説で、まずその複雑な物語の構造や多くの人によって…