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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「パーフェクト・ゲッタウェイ」 2009

パーフェクト・ゲッタウェイ(字幕版)

★★☆☆☆

 

あらすじ

 新婚旅行先のハワイでトレッキングに出かけた夫婦は、島に殺人事件の犯人である男女二人組が潜んでいるかもしれないとの情報を耳にする。

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感想

 トレッキング中に出会うどのカップル達に対しても、すべて犯人じゃないかと疑心暗鬼になってしまう新婚カップル。途中で知り合った男と行動を共にしていたら、その先にその男の彼女が待ち受けていて、ということはカップルで、もしかしたら犯人達か?と思わせたシーンは上手かった。

 

 主役の二人は二組のカップルに疑念を抱くのだが、確かに二組とも怪しい。さんざん意味深な言動をさせて観客をハラハラさせてくれる。しかし一向に犯人が正体を表して襲いかかる様子がなく、このまま盛り上がりもなく終了?と思っていたら、とんでもない方向から犯人が現れた。でも驚いたというよりも戸惑ったという方が正しい。

 

 

 自分たちが犯人と思われないために、第三者を意識して演技するのは当然あることだが、この犯人たちは完全に二人だけのときにも演技をしていたことになる。そうなると、その演技は誰のために演技をしていたのだろうか。もう単純に観客を騙すためにしていたとしか思えず、観客を意識しているということ自体、無理がある。実は各カップルにカメラマンがついているリアリティ番組でした、というオチなら納得できるが、それ以外の説明だったら受け付けられそうにない。

 

 犯人が現れてからは結構なアクションが展開されるのだが、どう考えても納得出来ないなと、それまでのシーンを反芻しながら考えていたので、全然頭に入ってこなかった。ただ、ミラ・ジョボヴィッチはいい額のかたちをしているから、オールバックがよく似合うなー、とぼんやり思ったのは覚えている。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 デヴィッド・トゥーヒー

 

出演 ミラ・ジョヴォヴィッチ/スティーヴ・ザーン/キエレ・サンチェス/ティモシー・オリファント/マーリー・シェルトン/クリス・ヘムズワース 

 

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「座頭市血笑旅」 1964

座頭市血笑旅 [DVD]

★★★★☆

 

あらすじ

 自分と間違えて殺されてしまった女が抱いていた赤ん坊を、父親のもとに届けることになった座頭市。シリーズ第8作。読みは「ざとういちけっしょうたび」

 

感想

 冒頭の足元だけを映したシーンから引き寄せられる。路面を杖や足で探り、小石や馬糞を避けながら歩いていく。それだけで座頭市のキャラクターが説明できているようにすら感じてしまう。

 

 シリーズも八作目ともなると、座頭市が戦う相手との因縁などの描写はなく、もう当然のように恨みを抱かれ、理由はわからないが彼を付け狙っているという構図。そんな恨みを抱かれてしまうようなヤクザな一匹狼の座頭市が、赤ん坊と旅をすることになるというのが今回の見所。シリーズ物になった映画では一回はありそうなエピソードだ。

 

 

 赤ん坊に情がわき、可愛くてしょうがない座頭市。女を買って一晩赤ん坊の面倒を見させて自分はぐっすり眠ろうと強かな算段をしながらも、気になってなかなか眠れず、結局ぐっすり眠る女の横で赤ん坊を抱きかかえている姿に思わず笑ってしまう。

 

 座頭市が着物を燃やしながら戦う最後の決闘シーンは迫力がある。ちゃんと安全対策をしているのか心配してしまうほどだ。子供を手放し、一緒に面倒を見ていた女を気づかないふりをして無視し、また一人きりで流浪の旅に出る座頭市。赤ん坊を思い出し、しばし立ち止まるシーンにしんみりとしてしまう。

 

スタッフ/キャスト

監督 三隅研次

 

脚本 星川清司/吉田哲郎/松村正温

 

原作 ふところ手帖 (中公文庫)「座頭市物語」

 

出演 勝新太郎/高千穂ひづる/金子信雄/加藤嘉/石黒達也/北城寿太郎/杉山昌三九

 

音楽 伊福部昭

 

座頭市血笑旅 [DVD]

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「15歳、アルマの恋愛妄想」 2011

15歳、アルマの恋愛妄想 (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 片田舎に住む少女は、ある出来事をきっかけに嘘つきのレッテルを貼られ、仲間はずれにされる。ノルウェー映画。

 

感想

 何もないような片田舎でいじめにあったらかなり辛いものがある。ほぼ学校と家の往復だけで過ごす生活のうちの一つで居場所がなくなってしまったことになる。ただ彼女はそれでも堂々としていたのがエラい。辛いことは辛いのだが、それでも決して卑屈になったり、自分を責めたりすることはなかった。

 

 そしてもう一つの場所、家でも母親との関係がギクシャクして、こちらでも居心地が悪くなってしまっている。問題は課金式テレホンサービスの請求書から始まっており、それは注意できるとしても、娘が性に目覚めて興味津々であることに対しては、母親が何を注意できるのか、難しいところではある。

 

 

 そんな彼女を救ったのが、外の世界に出てみたことだった。外に出て特に何をしたわけでもないが、自分がいた世界は広い世界の一部でしかないということを理解すると、途端に余裕のようなものが生まれてくるものなのかもしれない。今いる閉塞感のある場所がこの世の全てで、そこで生きていくしかない、と考えていたら、絶望感しかなくなってしまう。

 

 一気に状況が好転してしまうラストや、少しスベリ気味のコミカルなシーンなど、気になる点はあるが、コンパクトにうまくまとめられた映画だった。北欧っぽい色素の薄い感じの映像も良かった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ヤンニッケ・シースタ・ヤコブセン

 

出演 ヘレーネ・ベルグスホルム/ヘンリエッテ・ステーンストルプ/マーリン・ビョルホフデ /ベアテ・ステフリング/マティアス・ミーレン/ラース・ノルトヴェイト・リスタウ/ジョン・ブレイクリー・デヴィック/ユリア・バケ=ヴィーク/フィン・トクヴァン

 

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「喜びも悲しみも幾歳月」 1957

喜びも悲しみも幾歳月

★★★★☆

 

あらすじ

 灯台守の男とそこに嫁いできた女の人生。

 

感想

 灯台がある場所というのは当然、陸地の端っこで大抵が人里離れている。そこで仕事をし、生活をしなければいけない灯台守には、退屈や孤独とどのように付き合うかが大事になってくる。

 

 そのような職業だからなのか、灯台守の男たちが奥さんが実家に帰っていて寂しいとか、奥さんが戻って来るのが嬉しいとか、奥さんに対する愛情を素直で無邪気に口にしあっているのが意外な気がした。この時代の男たちはもっと寡黙で不器用かと思っていた。

 

 

 そのような異動で僻地を転々とする暮らしでも、子供の出産や成長といった人生のイベントは起こり、戦争の影は忍び寄る。他の灯台守たちも同様で、互いに協力し合い、助け合って乗り越えていく。彼らの絆の強さは、灯台守達がまるで一つの家族のようにすら思わせる。

 

 あまり彼らの仕事ぶりは描かれておらず、実際どんな仕事をしていたのかはよくわからないが、主人公たちの口ぶりからはその仕事に対する誇りが感じられる。そして、漁師たちに宴会で上座に案内され、酒を注がれるシーンからも、海に関わる仕事をしている人たちからは敬意を持たれていたことが良く分かった。

 

  今では日本の灯台は全て無人化して灯台守はいなくなったという。きっと定年を迎えて辞めるだけでなく、仕事がなくなって辞めた人もいただろう。日本の各地にいた灯台守たちは、その後どのように仕事から離れて行ったのかも気になった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/原作 木下惠介

 

出演

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高峰秀子/中村賀津雄/田村高広/仲谷昇/有沢正子/北竜二/夏川静江/桂木洋子/小林十九二

 

喜びも悲しみも幾歳月

喜びも悲しみも幾歳月

 

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「アン・ハサウェイ/裸の天使」 2005

アン・ハサウェイ/裸の天使 [DVD]

★★★★☆

 

あらすじ

 ヒップホップカルチャーに憧れる富裕層の高校生グループが、スラム街に出かける。

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 原題は「Havoc」。

 

感想

 簡単に言うと、何不自由なく満ち足りた生活に退屈したお金持ちのお嬢さんたちが、刺激を求めて貧民街に出かけたら痛い目にあった、という話だ。だが考えてみれば当たり前の話で、貧しいながらも必死に生きている人たちの町に、面白半分でお金持ちが遊びに来たら、そりゃ地元の人たちはいい気分がしない。

 

 お金持ちの子どもたちのヒップホップごっこは見ていて痛々しいものを感じるが、彼らにもヒップホップ文化を楽しむ自由はあるわけで、他人がどうこう言うものでもない。ギャングたちの悪さに憧れる子どもたちだが、きっと彼らの両親の方が無意識的に搾取や差別など、もっと大きな意味であくどいことをやっている可能性があるのは皮肉なことなのかもしれない。

 

 

 毎日が楽しくないという主人公たちが、つまらないと文句を言っているばかりでなく、楽しくするために自ら行動をとった事もどちらかというと賢い行いという気もする。ただし、自らの行動のアクセルとブレーキを上手く操る必要がある。必要以上に怖気づいてもいけないし、無謀に突き進んでもいけない。主人公の友人はブレーキをかけることができなかった。

 

 しかしどう考えてもバランスの悪い賭けをなぜ引き受けたのだろう。大胆すぎるというか、奔放すぎるというか、無謀すぎるというか。それだけ退屈な日々に鬱屈としていたということなのだろうか。

 

 ひとつの町で自分たちとほとんど接点のない集団が存在していることは、良いことなのか悪いことなのかよくわからなくなる。無理やり混ぜてもダメだろうし、そのままだと社会が分断されていく。今回は接点を持つことで悪いことが起きたが、互いに良い影響を与える交流というものもあるのかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督 バーバラ・コップル

 

脚本/原案 スティーヴン・ギャガン

 

出演 アン・ハサウェイ/フレディ・ロドリゲス/ビジュー・フィリップス/レイモンド・クルス/シリ・アップルビー/マイク・ヴォーゲル/ジョゼフ・ゴードン・レヴィット/レイモンド・クルス/マット・オリアリー/マイケル・ビーン/ローラ・サン・ジャコモ/アレクシス・ジーナ/チャニング・テイタム/ジョシュ・ペック

 

音楽 クリフ・マルティネス

 

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「昭和歌謡大全集」 2003

昭和歌謡大全集

★★★☆☆

 

あらすじ

 一人の若者が中年の女を殺してしまった事から、若者たちとおばさんたちの殺し合いが始まる。

 

感想

 町で中年女に買い物袋をぶつけられた若者が根に持ち、あとを付ける。声をかけ、口論になり喉を切り裂く。夢落ちっぽい映像で、きっとこれは想像なんだろうなと思っていたのに、そのまま物語は続いていく。

 

 そして殺された中年女の仲間たちが犯人の若者を特定し、復讐を果たす。これもどこか夢落ちっぽい映像。なのにそれも現実として物語は進行していく。この辺りの不思議な感覚は面白い。

 

 

 ただその後は間延びしたような展開でテンポが悪くなる。若者とオバさんの集団同士の殺し合いが始まるのだが、どちらも切羽詰まった感じが無く、とてものどかな雰囲気で殺し合いは行われている。そしてどちらかというとオバさん寄りの視点。もっと真面目に殺し合ってくれたら面白くなったのかもしれない。

 

 タイトルの通り、時々昭和の歌謡曲のタイトルが表示されるのだが、ほぼ意味はないように感じられ、何だったのかとモヤモヤが残った。

 

スタッフ/キャスト

監督 篠原哲雄

 

脚本 大森寿美男

 

原作 昭和歌謡大全集 (集英社文庫)

 

出演 松田龍平/安藤政信/近藤公園/樋口可南子/岸本加世子/池内博之/森尾由美/細川ふみえ/鈴木砂羽/内田春菊/市川実和子/古田新太/寺田農/ミッキー・カーチス/津田寛治/千石規子/サード長嶋/木下ほうか/山中聡/黄川田将也/眞島秀和

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昭和歌謡大全集

昭和歌謡大全集

 

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「12モンキーズ」 1995

12モンキーズ(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 ウィルスが蔓延し地下に逃れた人類が、発生当時のウィルスのありかを突き止める使命を服役囚に与え、過去に送り込む。

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 フランスの短編映画「ラ・ジュテ」にインスパイアされて作られた作品。 

 

感想

 ウィルスや謎の集団、精神病棟等、おどろおどろしい様々なもので包んであるが、本質はタイムスリップものだ。現在と過去を行き来しながらどう話がつながり、辻褄が合っていくのかを楽しむ物語といえる。

 

 こういうタイムスリップで過去に戻る物語は、原因を突き止めて事件を防ぐことで未来を変える、というのが定番だ。だがこの映画は過去に行ってウィルスを手に入れ、現在に戻ってワクチンを作る事を目的としているのが興味深い。つまり、ウィルスの蔓延は防ぎようがなかったとしている。

 

 

 それから、送り込む先が96年のはずだったのに90年だったり、第一次大戦中に送り込んだりしてしまううっかりミスが発生しているのだが、歴史的にはそれすらも折り込んでいることになっている。この手の映画なのに運命論が全体を支配しているのが面白い。

 

 色々と細かい描写に凝っているので、何度見てもきっと新しい発見がありそうな、深みのある映画に仕上がっている。

 

スタッフ/キャスト

監督 テリー・ギリアム

 

原案 ラ・ジュテ -HDニューマスター版- [DVD]

 

出演 ブルース・ウィリス/マデリーン・ストウ/クリストファー・プラマー/デヴィッド・モース/ジョン・セダ/フランク・ゴーシン/H・マイケル・ウォールズ

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12モンキーズ(字幕版)

12モンキーズ(字幕版)

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「そこのみにて光輝く」 2014

そこのみにて光輝く

★★★★☆

 

あらすじ

 日々を無為に過ごす男はある日、パチンコ屋で知り合った男の家を訪れる。キネマ旬報ベスト・ワン作品。

 

感想

 役者陣が皆いい演技をしているが、特に菅田将暉が良い。頭は悪そうだがいい奴という役を、本当に頭悪そうでいい奴に演じている。

 

 脳梗塞で倒れた父親、その世話で疲れ果てる母親、仮釈放中の息子、そして家族を支えるために身体を売る娘。主人公が知り合った、問題しかない一家。しかし、そこから逃れるには家族を捨てるしかないというのが切ない。家族を捨てられない心優しさが、彼らを現状に留めさせる。

 

 

 そんな一家の娘と恋に落ちる主人公。正直なぜそんなに真剣になってしまったのか良く分からないが、初めて出会った時の二人の意味深な視線が、運命的なものを表していたのかもしれない。

 

 自分の仕事や仮釈放中の弟の面倒を見てくれる男との関係など、様々なしがらみに囚われ諦めてしまっている女に対して、一つずつそのしがらみを解いてゆこうとする主人公。様々なものが行く手を阻むがそれでもあきらめない。簡単ではないが、決して乗り越えられないわけではないという微かな光が漂うラスト。

 

スタッフ/キャスト

監督 呉美保

 

脚本 高田亮

 

原作 そこのみにて光輝く (河出文庫)

 

出演 綾野剛/池脇千鶴/菅田将暉/高橋和也/火野正平/伊佐山ひろ子/田村泰二郎

 

音楽 田中拓人

 

そこのみにて光輝く

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「ザ・グレイ」 2012

ザ・グレイ (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 アラスカの石油採掘場で働く男たちが休暇に出かけるために乗った飛行機が墜落し、生存者たちは生き残るために極寒の地でオオカミと戦う。

 

 感想

 飛行機が次第に激しく揺れ出しているにも関わらず、乗客たちは何事もないかのように馬鹿話をしていたのに、誰かが飛行機の墜落を暗示するような事を口にした途端、急に皆意識して黙りこくってしまったのが非常にリアルだった。平常から非常に切り替わる瞬間。

 

 モヤモヤとした不安はあるが皆が何でもないような顔をしているからきっと大したことではないのだろうと自分も同じように振る舞うが、誰かがその不安を口にした途端、一気にそれが全員の心を支配する。その他にも、たき火を囲むと皆が急に自分のことを語りだしたりと、人の心理に影響を与える状況を上手く描けているような気がした。

 

 

 墜落事故で奇跡的に助かってホッとしているところに、オオカミたちが襲い掛かる。この人たちは酷い目に合ったのだから追い打ちをかけるのは可哀想だよと、大目に見てくれないのが自然の恐ろしさ。相手の都合などお構いなしで容赦などしない。生存者たちもこんな苦しい思いをしても最終的に死んでしまうのなら、飛行機事故で死んだほうがマシだったと思っていたに違いない。

 

 しかし飛行機の墜落事故が起きたのに救助を期待できないっていうのはどういうことなのだろう。悪天候のため二次被害の恐れがあるからか。まさか全く無視されることはないはずだろうから、やはり彼らは事故現場にとどまった方がよかったような気がする。残骸でバリケードのようなものを築けばオオカミの襲来も防げただろうし、そのうちに救助も来たはず。歩き回ることで疲弊し、脱落者を出すことになった。

 

 オオカミと戦うよりは逃げるのがメインだったので、あまりアクション映画的な面白さは無かった。そしてすごい所で終わるエンディング。そんなところで男の美学を見せつけようとするのかと。ちなみにエンディングロール後にも少しだけ続くので、最後までちゃんと見た方がいい。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 ジョー・カーナハン

 

製作 ジュールズ・ダリー/ミッキー・リデル/トニー・スコット

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出演 リーアム・ニーソン/フランク・グリロ/ダーモット・マローニー/ダラス・ロバーツ/ジョー・アンダーソン/ノンソー・アノジー/ジェームズ・バッジ・デール/ベン・ブレイ

 

ザ・グレイ (字幕版)

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「海月姫」 2014

海月姫

★★☆☆☆

 

あらすじ

 おたく女子が集まって暮らす古いアパートに、女装趣味の男が頻繁に訪れるようになる。

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感想

 あまりその世界に詳しくないのだが、それぞれ対象が違うオタクなのにオタクというだけで仲良くなれるものなのだろうか。いわゆるオタクの性質に対して互いに理解できるからリスペクトし合えるのかもしれないが、どうもそうでない人が彼らを十把一絡げにして「どうせお前らみんな同じだろ」と大雑把に決めつけているような気がしないでもない。

 

 本当は能年玲奈を中心とした女性陣のオタク的面白さと彼女たちの心境の変化を描いていくのが正解だと思うのだが、何故か菅田将暉を前面に押し出している。能年玲奈より菅田将暉の女装の方が需要があるという判断なのだろうか。正直、なんで何パターンもの菅田将暉のドレス姿を延々と見せられているのだろうと切ない気分になってしまった。そのくせ能年玲奈のドレス姿は1パターンしか見せない。他の出演者たちも大した見せ場がなく、気の毒になった。

 

 

  菅田将暉の女装姿に興味がある人なら十分に満喫できる映画だろう。

 

スタッフ/キャスト 

監督/脚本 川村泰祐

 

脚本 大野敏哉

 

原作 海月姫(1) (Kissコミックス)

 

出演 能年玲奈/菅田将暉/池脇千鶴/太田莉菜/長谷川博己/篠原ともえ/馬場園梓(アジアン)/平泉成/速水もこみち/中村倫也/片瀬那奈/内野謙太

 

音楽 前山田健一

 

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「ニューヨーク・ストーリー」 1989

 

ニューヨーク・ストーリー [DVD]

★★★★☆

 

内容

 3人の監督によるニューヨークを舞台にしたオムニバス映画。

 

あらすじ/感想/スタッフ/キャスト

「ライフ・レッスン」

あらすじ

 別れた恋人に未練が残る有名画家は、出て行こうとする彼女を引き止め同居を続ける。

 

感想

 恋人への未練が、画家の絵を描くことへの情熱となり、モチベーションを高めているようで、芸術家はなかなか因果な生き物だ。幸福だとつまらない作品しか生まれないのかもしれない。

 

 映画の中で使われている音楽がどれもいい。中でもプロコル・ハルムの「青い影」は何度もしつこく使われているが全然嫌じゃない。名曲の証。

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 画家の想いも叶わず彼女は出て行ってしまうが、すぐに新たな恋が芽生えるのが面白い。さすが有名画家といったところだが、ニューヨークは出会いに溢れている、ということでもある。

 

スタッフ/キャスト

監督 マーティン・スコセッシ


出演 ニック・ノルティ/ロザンナ・アークエット/スティーヴ・ブシェミ

 

「ゾイのいない人生」

あらすじ

 両親が不在がちのため、高級ホテルで一人で生活する少女。

 

感想

 少女の嫌味に感じないセレブっぷりが可愛らしい。ただこのオムニバス作品の中で、何が言いたいのか一番良くわからなかった。一人で高級ホテルで暮らすより、旅をしながらでも皆と一緒に過ごす方がいい、ということなのか。

 

 ラストシーンがヨーロッパで、ニューヨークが舞台というこの映画の趣旨に反するようにも思えたが、ニューヨークは世界の都市とつながっているともいえる。アメリカの片田舎からよりは、どこでも行けそうである。

 

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 フランシス・フォード・コッポラ

 

脚本 ソフィア・コッポラ


出演 ヘザー・マコーム/ジャンカルロ・ジャンニーニ/タリア・シャイア

 

「エディプス・コンプレックス」

あらすじ

 母親にいつまでも子ども扱いされて悩む中年男。

 

感想

 いつまで経っても息子を子ども扱いしてズケズケと意見を言い、誰かに息子の幼少期について訊ねられれば、アルバムを持ち出して来て微に入り細に入り事細かに延々と説明を始める。息子にしたら厄介だ。

 

 しかし女性にとっては子どもは作品なのだろうか。手をかけ育てたことを誇らしげに語り、自分の手元を離れた後は管理が行き届いているかチェックをして文句を言う。そんな親子の関係をコミカルに描いていて笑えた。

 

 それから箱の中に人が入って消えてしまうというよくある手品で、本当に中の人が消えてしまって、どこにもいなくなってしまったのは面白かった。このあと物語はシュールな展開を見せるのだが、ここからイマイチになってしまった。少し話がダレてしまった印象。

 

 母親を疎ましく思いながらも、結局は母親によく似た女性と付き合ってしまうという皮肉な展開。この物語が一番ニューヨークらしさがないのかもしれないが、ウディ・アレンにとってのいつものニューヨーク、といったところか。 

 

スタッフ/キャスト 

監督/脚本/出演

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出演 メイ・クエステル/ミア・ファロー/ジュリー・カブナー 

 

ニューヨーク・ストーリー [DVD]

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「サムライ」 1968

サムライ [DVD]

★★★☆☆

 

あらすじ

 容疑者となり、警察と依頼人に追われることとなった殺し屋。

 

感想

 状況を説明するような台詞もほとんどなく、淡々と物語が進んでいく。アラン・ドロン演じる殺し屋が仕事の最中にある女に目撃されたことから容疑者の一人となり、警察にて聴取を受けることとなる。しかし警察が来るのを待ち受けていたのは何故なのだろう。しっかり顔を見られていたと認識していたのだから、逃げればよかったのに。アリバイの口裏合わせをしっかりしているから逮捕はされないという自信があったということか。

 

 そして主人公の目論見通り無事釈放されるのだが、疑いを深めた警察にマークされ、自らにも捜査の手が伸びることを恐れた殺しの依頼主にもつけ狙われることになる。主人公は監視の目を意識しながらの行動を余儀なくされる。

 

 

 尾行を巻くために地下鉄を何度も乗り換えたりしているのだが、別に家でじっとしていればいいのに、と思わなくもない。そんな怪しい動きをするから警察にますます疑われる。ただ、もう一方の自分を消そうとしている殺しの依頼主の行動をじっと見ているわけにはいかないから仕方がない部分もある。とは言えこの部分が物語の大部分を占めていて、そんなに力を入れて描く所なのかなと思ってしまった。

 

 何とも言えないラストは、受けた仕事は必ず遂行するという男の矜持と、受けた仕事の内容に対するためらいとの間で生じたジレンマが、あの結末になったということなのだろうか。この手の映画でいつも思うのは、何も死ぬことないのにということだ。サムライの精神のようなものも感じなかった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ジャン=ピエール・メルヴィル

 

出演

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フランソワ・ペリエ/ナタリー・ドロン/カティ・ロシェ/ミシェル・ボワロン/ジャック・ルロワ

 

サムライ [DVD]

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「鬼龍院花子の生涯」 1982

鬼龍院花子の生涯

★★★★☆

 

あらすじ

 侠客の男とその家の養女となった女、そして彼らの周囲の者たちを描く。

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感想

 鬼龍院花子の生涯、と言いながら、その実は「鬼龍院花子の養父の半生」とした方が正しいのかもしれない。侠客に囲まれて育ちながらも学校に通って教師となり、やがて労働活動家の男と結婚した主人公の人生はあまり詳細に描かれておらず、いつの間にか教師となり、いつの間にか男と一緒になっていた。確かに自立した一人の女の人生よりも、侠客の男たちの抗争やその妻や妾達の人間関係の方が面白いのは否めないが。

 

 ほとんど主演と言っていい仲代達矢の、肝の据わった雰囲気や侠客という言葉に無邪気に反応する子供っぽさ、危機を察知する勘の鋭さ等、物語の中で見せる様々な表情には吸引力がある。彼の演技だけで侠客一家の栄枯盛衰すら表現できているような気がする。

 

 

 そしてあまり見せ場のなかった夏目雅子だが、終盤の有名な「なめたらいかんぜよ!」のシーンだけで面目躍如のインパクトを与えている。侠客の世界とは距離を置いて自らの人生を歩んではいたが、義理とはいえあの父親の血を受け継いでいるということか。その後に父親と言葉を交わした時の、彼女の何とも言えない表情が良かった。

 

スタッフ/キャスト

監督 五社英雄

 

原作 新装版 鬼龍院花子の生涯 (文春文庫)

 

出演 夏目雅子/仲代達矢/仙道敦子/岩下志麻/佳那晃子/室田日出男/夏八木勲/佐藤金造/アゴ勇/益岡徹/山本圭/梅宮辰夫/成田三樹夫/夏木マリ/綿引洪(綿引勝彦)

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音楽 菅野光亮

 

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「映画 みんな!エスパーだよ!」 2015

映画 みんな!エスパーだよ!

★★☆☆☆

 

あらすじ

 ふとしたきっかけで超能力を手に入れた男子高生が、世界を救うために戦う。人気ドラマの劇場版。ドラマ版の続きというよりも、新たに物語を描きなおしていて、ストーリーも異なっている。

 

感想

 バカバカしい内容ではありながらも、ドラマ版では特殊な能力を持ってしまった苦悩であったり、思春期の年頃ならではの煩悶などが描かれていて、それなりにメリハリがあって深みもあったが、この映画版ではバカバカしさとお色気シーンが増量され、一方で苦悩や煩悶の内面を描くシーンは減量されていて、メリハリがなく正直見ていてつらかった。

 

 ドラマでは怪演を見せていたマキタスポーツやその他のキャラたちもほぼ見せ場がなく、大人しい印象になってしまっていて、彼らを登場させる意味をあまり感じなかった。このあたりはドラマ版との兼ね合いがあるのだろう。

 

 

 ドラマ版との違いで一番でかいのは、夏帆の不在。夏帆の不貞腐れたような田舎のヤンキー姿を見れないなら、映画化する意味がないと言ってもいいほど。代わりに池田エライザが出ていたが、夏帆のあの感じは出ていなかった。

 

 ドラマ版から見ている人も劇場版から見た人も、きっと不満を感じてしまう作品になってしまっている。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本

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原作 みんな! エスパーだよ!(1) (ヤングマガジンコミックス)

 

出演 染谷将太/池田エライザ/真野恵里菜/マキタスポーツ/柄本時生/イジリー岡田/神楽坂恵/安田顕/高橋メアリージュン/今野杏南/篠崎愛/板野友美/関根勤

 

映画 みんな!エスパーだよ!

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「イーグル・アイ」 2008

イーグル・アイ (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 双子の兄を亡くした若い男は、ある日突然、謎の女から電話で指令を受け取り、事件に巻き込まれていく。 

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感想

 主人公はある日、謎の女からの突然の指示を受ける。当然、素直に従うわけもなく無視をするが、そうするとどんどんと不利な状況に追い込まれていく。どうやら指示を聞いた方がいいみたいだと気づくが、それでも何のために自分が何をやっているのかまったく知らされないため、苛立ちが募り、反発を覚える。どんどんと事件に訳もわからず巻き込まれていく。

 

 そして主人公だけでなく多くの人間が、同じような境遇に置かれていることに気付く。主人公と関わり手助けする人間たちが皆同じようにどこかイラついている。事件は多くの人を巻き込み、かなり壮大な規模で起きていることがわかる。

 

 

 映画ではよくコンピューターの反乱が描かれているが、この映画はかなり具体的に描写されていて面白い。人間と同じように、指導者が悪いから取り替えようという発想で、真面目な仕事人間と同じ発想でもある。自分の仕事に誇りを持っていて、それを否定されて怒ってしまった。

 

 だがコンピューターの推奨する方針は概ね信頼できるのだから、もっとうまいことやれば皆の支持を得られたような気もする。このコンピューターはまだ人の気持ちが理解できなかったようだ。「人を動かす」とか読んでから、皆に指示を出せば結果は違ったのかもしれない。

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 事件に巻き込まれていく主人公をただ眺めるしかない序盤から、次第に事件の全貌が姿を現してくる展開はうまい。ただ相手がコンピューターだけに、最後の対決はコンピューターを壊すだけ、というのが盛り上がりに欠けた。きっとそれは作り手もわかっていて、もう一つのクライマックスを用意していたのだが、それもどこかすっきりしなかった。

 

スタッフ/キャスト

監督 D・J・カルーソー

 

製作 アレックス・カーツマン/ロベルト・オーチー/パトリック・クローリー

 

製作総指揮

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出演 シャイア・ラブーフ/ミシェル・モナハン/ビリー・ボブ・ソーントン/ロザリオ・ドーソン/マイケル・チクリス/アンソニー・マッキー/イーサン・エンブリー/キャメロン・ボイス/ウィリアム・サドラー/(声)ジュリアン・ムーア*

*クレジットなし

 

イーグル・アイ (字幕版)

イーグル・アイ (字幕版)

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